鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

空に溶け込むと。

 

 空を見上げると、私は自分が溶けて行くのが分かる。そのままにしておくと、私はふっと消える。痕跡を隠すようにして、そこには風が吹く。何事も起きていない、そう言いながら世界は回る。そういう人がこの世界には、何人いるだろう。同じ空を見て、同じ気持ちを持って、同じ所を見る。私たちは、運命共同体

 

 私を埋め尽くすほど広大な空に、溶けて行けるのなら、そうしたい。もしもそうなったのなら、誰が気付くのだろう。私は空から私と同じ人を、空へ誘う。空は空っぽ、なにもない。ただ綺麗だと思いながら、風に乗って行きたい所へ行くだけ。旅をする、世界を見てくる。

 

 私の手を取ったら、空へ連れて行ってあげる。取るか取らないかは、君の自由としよう。手を取れば私と同じになるだけ、一人ではないと思う。君が寝た後に私はそっと現れて、君に声を掛けてあげる。怖がることでも、恐れることでもない、頷いてくれたら陽が昇るのを、空から一緒に眺めるだけ。ずっとここにいることもできる、帰ることもできる、それは君の自由。

 

 今日の夜、君の元に私は現れる。