・※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(3)」の続きになります。
「君はどうする」駅員はリンドバーグを見つめる。静寂の月に、鼓動が響く。リンドバーグは立ち尽くし、迷う。目の前で回る地球儀の記憶の中に、二人が寄り添って歩く姿が見える。あそこに戻れたらどれほど、幸せだろう。けれどリンドバーグは、今まで彼がしてきた選択の結果を否定したくはなかった。
駅員が突然笛を吹く。「.....間もなく列車が来ます」
「列車?」
「求める人の所へ、鯨は現れるのです。」
僕とリンドバーグが揃う時、そこに不可能はない。僕は宇宙船、サンタクロースの姿になって彼の元へ飛ぶ。サンタクロースという人は、夢を届ける。愛を、朝を届ける。僕はリンドバーグが求めるものを届ける、僕は彼の味方でなくちゃならない。
ぷしゅーという蒸気の音とともに現れたのは、宇宙船サンタクロース。五両編成の列車くらいの大きさに変わっていたが、見た目は間違いなく此処へ来た、宇宙船。驚きつつも駅員に「チャールズと人魚はどこに?」と聞くと、「彼等もまた、記憶の中にいるのさ」とだけ返されてしまった。ゆっくりとコックピットが開く、操縦席に座っていたのは、チャールズだった。チャールズはリンドバーグの心にしまってある、彼女の「翼の欠片」を取り出し、それを乗車券として預かった。
「これから彼女に朝日を届けに行く」
「君と僕は二人で一つなんだ」チャールズの言葉を聞いた時、リンドバーグは一人になる。
「チャールズ・リンドバーグ」はiHARBORへ飛び込んだ彼女に、朝日を届けに行く。
彼女は確か、「お日様」が好きだったと思い出した。
(もう6月ですね。 6月1日)