鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

虹の麓

 虹、その存在を私は信じている。あなたは信じているの?

あいつはたまにしか顔を見せない癖に、顔を見せる時はいつも空が晴れる。同じようにして、私の心の曇りの合間に、少し虹が見える。虹を見た時、その麓のことを考える。虹はどこから始まり、どこで終わるのか。私にも悩みや、迷いや、苦しみがある。拭いきれない痛み、そのものが。

 

 虹を見ると、そういったものがほんの少しだけ、楽になる。心が少し軽くなる、いつも重たい心が。私は笑顔を絶やさないようにしたい、そうしていれば、悩みが勝手に解決される気がしているから。いつもないものが、ないことが、そこにある。虹に届く時、心に翼が生まれる。心を引き摺っている私を、虹の終わりへ連れて行ってくれる。

 

 そこで迷子になる私をどうか、誰か案内をして欲しい。虹の先へ、案内をして欲しい。雨上がりの空に虹が架かるのは、そして虹がそよいで消えて行くのは、この世界から一人だけ、たった一人だけ、虹の先へ行けたから。

 

次は私の番かも知れなければ、あなたの番。