鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

かつて海に沈んだ空

 

雨も嫌われたものだと思う、降りたくて降っているわけじゃないだろう。

あの透き通った空は、絵本の中に閉じ込められている。

隠された晴れ間の空、誰かがその本を見付けた時、頁を開いた時に空は晴れる。

 

かつて海に沈んだ船のように、横たわる空。

そこに糸を垂らして、晴れ間を連れて来る。

嫌がるのをなだめて「いないと困るんだ」と励まして、連れて来る。

 

この世界で一番「空」を大切にしている人が、晴れた空を隠している。

「本当に大切なものは、誰にも分からない所に置いておくんだ」

そういって、替わりに梅雨を連れて来る。

 

申し訳なさそうに虹が顔を見せる、僕らの顔が晴れる。

「お邪魔しました」といって消える虹、僕らの顔が曇る。

僕らは余りにも単純で、流されやすい。

 

流行の風邪にやられた僕たち。