鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

市街地

・怪談になります

その日は友人と遊んだ帰り道だった。

 

すっかり陽が暮れて、辺りはもう暗い。けれど車内にエアコンを効かせていないと、まだ蒸し暑い。私は助手席で、夜に沈んだ街を眺めている。山に囲まれた街、山と山との間にこの街はある。不気味に窪んだその街、山の麓に点在する鳥居は、街を囲むようにして作られていると最近聞く。

 

私はこの街から車で四十五分ほどの所に住んでいるから、ここがどのような街なのかは余り分からない。ただ、通る度に異様に静かで、窮屈な印象は受ける。家から零れる明かりは少なくて、街灯の明かりの方が強い。

 

ここを通る時、いつも私を楽しませてくれる友人の口数が減る。気のせいかも知れないけれど、特段気にするようなことでもなく、私も気にしないようにしていた。もうすぐトンネルに入る、このトンネルを抜ければ、この街を出れる。

 

「トンネルを出たら、コンビニに寄っていい?」

そういった友人は、後ろを気にしているようだった。

「...うん」

「煙草吸いたくて」

「まだ吸ってたの?」

私は一ヶ月前に、辞めたと聞いていたから。

「あなたの前でしか吸わない」

私は少しぎょっとした、たまにこういうことをさりげなく言う。

 

そうしてぼんやりと市街地を眺めていると、ある一つの街灯に眼を取られた。

やけに煌々と明るくて、蛾が回りを飛んでいるようで。その街灯の下に、人の姿をしたなにかが、こちらを瞬きもせずにじっと見つめていた。思わず私は眼を逸らす、見てはいけないものを見たのだと肌で感じたから、一瞬のできごとだった。

 

 

.....暫くして、道沿いのコンビニへ立ち寄り、私はさっき見たものの話しを彼女に話した。終始黙って聞いていた、話し終えると煙草を深く吐いて、私を無言で見つめてくる。

 

私の背後で、ブラックライトに焼かれて死ぬ蛾の音がした。

 

 

 

※ 後書き

オチは適当に書きました、リクエストとかあればそのテーマで書きます、あれば。