鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

或る花の名前

花は良いなと、より思うようになった。

足音のしない店内に、花の命を感じた。

深い眠りから私を覚ましたのは、誰かが差し伸べた、温かな手だった。

 

眠りの底に着いたとき、お日様の香りがした。

「もうすぐ花が咲くね。」という、誰かの言葉が聞こえる。

私はそれを待っていたのだと思う。

 

窓に付いた水滴を一粒、それと優しい気持ち。

横目には、涙目で外を見つめる、白い顔。

あの青く澄み切った空から聴こえる、知らない歌。

 

いつ枯れるかも分からない、花束を抱えたまま

重力から解き放たれて、ここから旅立とうとする人へ送る

一輪の花。