新居とも見て取れない、だけど懐かしい香りを感じる一軒家。
空が赤トンボと同じ色に染まってきた時、僕は小さな小窓から中を伺う。
陽に照らされた室内には僕の影が一つと、地平線に沈む陽が一つ。
僕は今でもこの景色を思い出して、この景色を見つめている。
僕の瞳が捉えたこれは、果たして幻なのか、果たして宇宙なのか、果たして愛なのか。
似たような住宅街に佇む、だけど誰も見たことがないであろうこの家。
小窓の向こう側、室内に足を踏み入れた時、大発見を見付ける気がしている。
今と、過去と、空間が交差して誰も見たことがない宇宙になる。
銀河系は僕の手の平で円を描き、命の始まりと終わりが一つになる。
誰かが想いを込めて作った写真立てを見て、烏が鳴く声が聞こえる。
大海原に散って行った魚たちは、いつかまた、此処に帰る日が来るだろう。
此処は陽が当たらない高架線の下にある、ぼんやりとした灯火のようなもの。
たった一つ、誰にも負けず、強く残り続けた何か。