鍵のない図書館

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君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、沈黙の月(二章)

 

・※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(3)」の続きになります。

 

 「君はどうする」駅員はリンドバーグを見つめる。静寂の月に、鼓動が響く。リンドバーグは立ち尽くし、迷う。目の前で回る地球儀の記憶の中に、二人が寄り添って歩く姿が見える。あそこに戻れたらどれほど、幸せだろう。けれどリンドバーグは、今まで彼がしてきた選択の結果を否定したくはなかった。

駅員が突然笛を吹く。「.....間もなく列車が来ます」

「列車?」

「求める人の所へ、鯨は現れるのです。」

 

 僕とリンドバーグが揃う時、そこに不可能はない。僕は宇宙船、サンタクロースの姿になって彼の元へ飛ぶ。サンタクロースという人は、夢を届ける。愛を、朝を届ける。僕はリンドバーグが求めるものを届ける、僕は彼の味方でなくちゃならない。

 

 ぷしゅーという蒸気の音とともに現れたのは、宇宙船サンタクロース。五両編成の列車くらいの大きさに変わっていたが、見た目は間違いなく此処へ来た、宇宙船。驚きつつも駅員に「チャールズと人魚はどこに?」と聞くと、「彼等もまた、記憶の中にいるのさ」とだけ返されてしまった。ゆっくりとコックピットが開く、操縦席に座っていたのは、チャールズだった。チャールズはリンドバーグの心にしまってある、彼女の「翼の欠片」を取り出し、それを乗車券として預かった。

「これから彼女に朝日を届けに行く」

「君と僕は二人で一つなんだ」チャールズの言葉を聞いた時、リンドバーグは一人になる。

「チャールズ・リンドバーグ」はiHARBORへ飛び込んだ彼女に、朝日を届けに行く。

彼女は確か、「お日様」が好きだったと思い出した。

 

(もう6月ですね。 6月1日)

(遅くなってごめんなさい! 6月2日)

 

 私はその頃、iHARBORの中で記憶の海を漂っていた。ゆらゆらりと波に身を任せて、どこの記憶へ飛び込もうと悩んでいた。リンドバーグと過ごした、楽しく暖かかった頃、その暖かさが少しずつ冷えていった頃、泣いたあの日の夜。私の目の前を走馬灯のように横切る記憶には、一つずつ色が付いている。私はもう、涙を流すことに疲れて、これから悲しみの涙を流せなくなったとしても、私は私の心を守りたい。お日様が好きだから、海の向こうに見える朝日を目指して、漂い出す。

 

 チャールズ・リンドバーグは宇宙船に乗り込む、コックピットが閉まったのを確認した駅員が笛を吹くと、ざぶんという大きな音が一度する。記憶の海へ、潜り込んだのである。進むのは海の底、星の砂を巻き上げながら進む。海面には記憶がゆらりと漂っている、彼女はどこだ。広大な海で、一瓶探し出すようなものだ。頼れるものは、彼女の心の欠片でもある翼の欠片。コンパスのように手の平に置くと、方角を示してくれている、どうやら海面に上がる必要があるみたいだ。

 

(ここまでにします。また書きます)