2020-01-01から1年間の記事一覧
かの船はかつて世界中の海を旅していた、大いなる自由の船らしい。 ゆきたい場所へ舵を動かし、風が吹く方角に帆を張る。 陽が沈む向こう側を目指し、そして全てを知り得た。 世界の成り立ちを理解した時、言葉をなくした潜水士は海へ飛び込んだ。 そこから…
知らない言葉が重く、海の底に横たわる。 酷く古い言葉、海藻や珊瑚が張り付いている。 誰にも伝わらずに届かなかった言葉が、息を潜めている。 そのむかし、ここは欲望と快楽と探求が渦巻く街だった。 それも過去のこと、今となっては私と残された言葉たち…
流れ着いた小さな島、椰子の木がぽつんと塩風にそよいでいる。 砂浜は陶器のように白く、そしてどこか温かい色を持つ。 辺りは海に囲まれていて、それ以外はなにもない、あってはならない。 私が目を覚ました時、まず海の香りが鼻に付いた。 ずぶ濡れの体を…
見えないもの、捉えられないもの、手から零れ落ちるもの。 実体がないもの、感覚が乏しいもの、波のように揺れるもの。 掴んで、零して、また掴む。 君はどう掴む、握り締めるのか、抱きしめるのか。 確実に掴んだと手を握り締めた時、それは嘘かも知れない…
かつてこの地で、かの惑星による大戦があったらしい。 ぼくは今、火星の荒野に立ち尽くしている。赤く焦げ茶の大地には、ごろりと石が転がり、目の前には大きく城壁のような砦が構えている。その城壁を囲むように配置されている、見たこともない大きな戦車。…
私事ではありますものの、この度、読者登録が「100人」を迎えました。 いつも立ち寄っていただいている、どこの誰かも分からぬ皆様、ありがとうございます。 なんのまとまりもない文章に目を通していただいて、嬉しいです。 私も訪れられた方のBlogには、で…
塞き止める、僕は今、水の中にいる。 ちっとも苦しくはない、そこで水が外へ溢れ出すのを防いでいる。 ここは教室、いわゆる高校生、先生...先生...先生。 沈んだ教室に小魚の群れが来る、地震のように揺れる。 そこに大きなシャチが来る、あるすべてを平ら…
夕暮れを顔に滲ませながら、疲れた顔で帰る人々。 少しホッとしただろう、一日が何事もなく過ぎて。 夜ご飯はなににしようか、インスタントでもいい。 急ぎ足で歩く人、肩を落としながら歩く人、怒りながら歩く人。 僕らはよくやっているはずだ、我慢は続か…
星空の歩き方を知っているか、手鏡を持ってくるといい。 それを目元に当てると、君の眼下に広がる宇宙。 あっという間に大気圏を越えて来た、君は今、無重力。 ごちゃりとした社会を抜け出して、地球を越えて、空を飛び越えた。 そして君は今、宇宙を歩きに…
スーパーで花火を買った後、汗を拭いながら駐車場へ歩く時だった。 「僕、パンク・ロックが好きだ」 「中途ハンパな気持ちじゃなくて」 「本当に心から好きなんだ」 喧騒をぶち壊して爆音が響く、車から響いているようだが姿は見えなかった。 あの一瞬が、そ…
人参のスープとタコライス、どちらもとても美味しそう。 スープからはほのかに湯気が立ち昇り、タコライスからは焼きチーズの香りがする。 僕はこの二品を頂くことにした、窓の外ではまだ雨が降っているよう。 静かに雨音を耳にしながら食べ進めていると、精…
大通りから脇道に抜けると、喧騒は遠のいた。 人混みを離れ、森の香りが漂ってくる小道を進む。 雨上がり、雨粒が滴る小人の道を抜けると、妖精が訪れるような珈琲店がある。 木々に囲まれたその店は、人間界を抜け、どこか異国へ通ずるような佇まいである。…
ふとした時に考える、私たちは何故、感情を感じるのか。 楽しいと笑い、悲しいと泣き、怒られると落ち込む。 それがすべてではなくて、人によって捉え方は異なる。 なにかに共感し、同情し、共有する。 大学生の時、「人間は独り」と語っていた教授の言葉を…
霧の掛かった峠を抜けると、そこには見たこともない大雲海が広がっていた。 山頂から見下ろす眼下には、雲海が広がっている、時刻は24時を少し回った所。 なみなみとした雲が月明かりに照らされて、ゆっくりと流れて行く。 私はそれを見て、綿あめを嬉しそう…
「機動隊」と「カップラーメン」と「人情」 どうだろう、この三つのワードを書いただけで、そこには「ドラマ」があると思わないか。 今回は読者の想像力に委ねよう。 ※ 後書き ネタがないだけです、絞り切った残りカスみたいな文章です、許して下さい。
暑いな、実に暑くはないか。これから今日よりも、一層暑くなると考えると気が滅入る。「夏」という季節には、様々な言葉が当てはめられる。青春、恋人、花火、列車、入道雲.....四季があるとは言えども、やはり人生を象徴するようなものが紛れる季節である。…
それはまるで、飴色の角砂糖のよう、触れるととろりと溶けてしまう。 水が張られた田んぼの中を、静かに走る電車、車窓から朝日と同じ色が零れる。 三両編成で、如何にも秘境を走っていそう、秘密の街へと辿り着く。 夜の香りが立ち込める、すぅーっとする優…
最近は自宅で過ごす機会が多いと思う。 君は家にいる時、パジャマか部屋着を着るだろう。スーツのようにびしっとせず、仕事着のようにしっかりせず、私服のように見栄えを気にする必要がない。 .....伝説のパジャマを知っているか。 なにやらそれを着ると、…
・怪談になります その日は友人と遊んだ帰り道だった。 すっかり陽が暮れて、辺りはもう暗い。けれど車内にエアコンを効かせていないと、まだ蒸し暑い。私は助手席で、夜に沈んだ街を眺めている。山に囲まれた街、山と山との間にこの街はある。不気味に窪ん…
雨も嫌われたものだと思う、降りたくて降っているわけじゃないだろう。 あの透き通った空は、絵本の中に閉じ込められている。 隠された晴れ間の空、誰かがその本を見付けた時、頁を開いた時に空は晴れる。 かつて海に沈んだ船のように、横たわる空。 そこに…
忘れている匂いを、ふとした時に想い出すことはない? その匂いに触れた時「ぁ、これはこの人の匂い。これはあの時の匂い」 などと記憶の引き出しを開けて、思い出すことがあると思う。 私も言うに及ばず、ちょっとした場所や景色などを見ると ここはあの人…
世の中には様々な仕事がある、ここには書き切れないほど多く。 諸君、今日もお仕事お疲れ様である。 「褒める」ということが、なくなりつつあると思っている。 私たちは一体、何故ここまでして、必死に働いているのだろうな。 誰のために、誰かのために、な…
・結果、なにもない。 なにもないのである、筆者の頭の中の僅かすぎる空想力が刹那に消えた。 始めから分かっていたことではあるが、本日はネタがない。料理する食材もない、筆者の頭は空である。ネタを投げ飛ばした挙げ句、自分では手が届きそうもない所に…
ただそこにあるべきものがあり、ただそこに白紙の空間がある。 なにもない、0からなにかを始め、生み出すことはとても難しいと思う。 0から1を生み出す人もいれば、5を生み出し、10を生み出すことができる人もいる。 私たちは白紙から、空白に描く、そこに生…
緩く眼が覚める、置き時計を見るとa.m.2:00を少し過ぎる所だった。 その日の夜はやけに生暖かい、額にじんわりと汗をかいていたのが分かる。 暑さに沈む寝室、そよがないカーテン、冷えたお茶を飲もうとリビングへ下りる。 .....階段を下りる、下りる、下り…
5時の鐘が鳴ったのを聴いて空を見上げたら、赤く染まっていた。 今日は一日ずっと遊んでいた、「またね」といって帰る友達。 明日が来ることに、明日が晴れることに、なにも疑いがない。 家に帰ったら、土が付いた手を洗って、ご飯ができている。 「ただい…
・これは夜更けに、ある山道を通っていた時のことである。 季節は初夏、夜を涼しいと感じるようになった頃。その日は一日車を走らせていたのだが、やけに動物の骸が多かったように思う。見る度に、胃の底に重い鉛があるような気分になる。 しばらく峠を走ら…
・さて、季節は梅雨になりました。 雨が降る空の下には、いつも秘密基地がある。 誰かが雨の下で、こっそりと雨を楽しんでいる。 子供の頃、傘を持ち出して、皆で作った秘密基地。 僕たちは大人になっても、雨が好きでいたい。 雨の音は落ち着くけれど、独り…
「すべての道は繋がっている」たまに思い出す一文である。 交差点を歩く人、その一人一人に道がある。決めた道、決められた道。別れた道、隔たれた道。みなそれぞれの道を歩き、躓いたり転んだりしている。私は思う、今そこを歩く君は、自分の選んだ道に頷け…
※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、沈黙の月(三章)」の続きになります。 僕たちはお互いの背後からゆっくりと顔を覗かせる朝日を見ていた、海面は穏やかで、風はほとんど吹いていない。広すぎる海のどこかに、僕たち二人ぽつんと漂っている。すると…