鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

波を掴む

 

見えないもの、捉えられないもの、手から零れ落ちるもの。

実体がないもの、感覚が乏しいもの、波のように揺れるもの。

掴んで、零して、また掴む。

 

君はどう掴む、握り締めるのか、抱きしめるのか。

確実に掴んだと手を握り締めた時、それは嘘かも知れない。

手を開いた時、そこにはなにもなく、揺れる波のようなものがある。

 

手の平を高く空へ突き上げると、青が零れてくる。

可能性と不確実の色、それが青、蒼。

知らない「なにか」がそこにある。

 

ゆらりと揺れる波、世間の熱気、伸びた君の影。

言葉だけが波の中を漂い、そして届く。

私たちを繋ぎ留めるのは言葉。

 

君の影に隠れて問い掛ける、ここは何処と。

流れ着いた小さな島には、カメがいる。

陽が地平線へ沈むのを共に見て、空を見上げて考える。

 

答えがないのなら、また世界に問い掛ける。

心を絞って、また絞る、零れ落ちる青。

そこでようやく自分を許す。