ham-chanz’blog

書きたいことを書く。

虹の麓

 虹、その存在を私は信じている。あなたは信じているの?

あいつはたまにしか顔を見せない癖に、顔を見せる時はいつも空が晴れる。同じようにして、私の心の曇りの合間に、少し虹が見える。虹を見た時、その麓のことを考える。虹はどこから始まり、どこで終わるのか。私にも悩みや、迷いや、苦しみがある。拭いきれない痛み、そのものが。

 

 虹を見ると、そういったものがほんの少しだけ、楽になる。心が少し軽くなる、いつも重たい心が。私は笑顔を絶やさないようにしたい、そうしていれば、悩みが勝手に解決される気がしているから。いつもないものが、ないことが、そこにある。虹に届く時、心に翼が生まれる。心を引き摺っている私を、虹の終わりへ連れて行ってくれる。

 

 そこで迷子になる私をどうか、誰か案内をして欲しい。虹の先へ、案内をして欲しい。雨上がりの空に虹が架かるのは、そして虹がそよいで消えて行くのは、この世界から一人だけ、たった一人だけ、虹の先へ行けたから。

 

次は私の番かも知れなければ、あなたの番。

君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、沈黙の月

 

・※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(3)」の続きになります。

 

 「君はどうする」駅員はリンドバーグを見つめる。静寂の月に、鼓動が響く。リンドバーグは立ち尽くし、迷う。目の前で回る地球儀の記憶の中に、二人が寄り添って歩く姿が見える。あそこに戻れたらどれほど、幸せだろう。けれどリンドバーグは、今まで彼がしてきた選択の結果を否定したくはなかった。

駅員が突然笛を吹く。「.....間もなく列車が来ます」

「列車?」

「求める人の所へ、鯨は現れるのです。」

 

 僕とリンドバーグが揃う時、そこに不可能はない。僕は宇宙船、サンタクロースの姿になって彼の元へ飛ぶ。サンタクロースという人は、夢を届ける。愛を、朝を届ける。僕はリンドバーグが求めるものを届ける、僕は彼の味方でなくちゃならない。

 

 ぷしゅーという蒸気の音とともに現れたのは、宇宙船サンタクロース。五両編成の列車くらいの大きさに変わっていたが、見た目は間違いなく此処へ来た、宇宙船。驚きつつも駅員に「チャールズと人魚はどこに?」と聞くと、「彼等もまた、記憶の中にいるのさ」とだけ返されてしまった。ゆっくりとコックピットが開く、操縦席に座っていたのは、チャールズだった。チャールズはリンドバーグの心にしまってある、彼女の「翼の欠片」を取り出し、それを乗車券として預かった。

「これから彼女に朝日を届けに行く」

「君と僕は二人で一つなんだ」チャールズの言葉を聞いた時、リンドバーグは一人になる。

「チャールズ・リンドバーグ」はiHARBORへ飛び込んだ彼女に、朝日を届けに行く。

彼女は確か、「お日様」が好きだったと思い出した。

 

(もう6月ですね。 6月1日)

空に溶け込むと。

 

 空を見上げると、私は自分が溶けて行くのが分かる。そのままにしておくと、私はふっと消える。痕跡を隠すようにして、そこには風が吹く。何事も起きていない、そう言いながら世界は回る。そういう人がこの世界には、何人いるだろう。同じ空を見て、同じ気持ちを持って、同じ所を見る。私たちは、運命共同体

 

 私を埋め尽くすほど広大な空に、溶けて行けるのなら、そうしたい。もしもそうなったのなら、誰が気付くのだろう。私は空から私と同じ人を、空へ誘う。空は空っぽ、なにもない。ただ綺麗だと思いながら、風に乗って行きたい所へ行くだけ。旅をする、世界を見てくる。

 

 私の手を取ったら、空へ連れて行ってあげる。取るか取らないかは、君の自由としよう。手を取れば私と同じになるだけ、一人ではないと思う。君が寝た後に私はそっと現れて、君に声を掛けてあげる。怖がることでも、恐れることでもない、頷いてくれたら陽が昇るのを、空から一緒に眺めるだけ。ずっとここにいることもできる、帰ることもできる、それは君の自由。

 

 今日の夜、君の元に私は現れる。

君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(3)

・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。

 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足で、駅へと向かう。

 君は結局強くて、しっかりしていて、彼より頭がいい時がある。そこにいては鯨に食べられてしまうだろう、鳴き声がこの街に響く。彼の耳にはきっと違う声が聞こえていたはず、それは現実的で曖昧的でどこか夢の国。そこは現実と夢の狭間、そこで彼等は優しい風を待つ。頬を温めるような、小さく光る風。彼は歩く、足があるから。理由はそうだったように思う、夜は深まる。

 

(2020年 5月10日)

(5月11日 再会)

 

 世界は昼の中にはない、夜の中にこそ新しい世界がある。まだ見たことがない、誰も知らない新しい世界。彼はその世界を、まだ知らない。君は夜に戻ることをやめた、「私はお日様が好き」と言って立ち上がる。僕は今、それを見ている。時計に意味はない。

 

 私は立ち上がる、海に沈めた欠片を置いて。そして知らない、まだ見ぬ世界。誰も知らない未来。私はそこに行く、どこか遠くの知らない駅から。私の世界を変えることは、誰にもさせない。私はそういう頑固な所がある、それは知っている。誰にも邪魔されたくない、夜は一人にして欲しいの。女の子は皆、動物が好き。私も鯨は好きだけど、私のことをどう思っているのかは知らない。動物と会話がしたい、私が話したいのは彼じゃなくて、新しい世界に翼がある人。彼の翼は知っている、その色と、空への飛び方も。だから知らないことを知る、これは興味本位。分かって欲しい、私も心の痛みは知っている。同じ痛みはない、誰にも、皆違う。駅には私一人、きっと彼は来るでしょう。夜の中から、鯨とともに。

 

 僕は大きな物を持っている、大きな人を待っている。見えるだろうか、伝わるだろうか、全ての僕たちへ。そして僕の世界たち、今、僕はここにいる。大きな地図を広げて、風を待っている若者達。僕が「今」を知っている、その先の未来と、出会いを。戻らないことも世の中にはある、未来の大きな人に託す。過去と、今と、未来が交差する。僕はそこから産まれた鯨、大きな、大きなHEROでもあり、僕は悲しみそのもの。時計の針が戻る、秒針の音が鳴る。人を呼ぶ、虹を見る、夢を伝える。僕は全て、そこからの未来。君たちは知らない、僕が新しい世界。僕は夜から来た、コンパスはいらない。心は道標になる、だけど優しさを知る者しか分からない。音色とともに設計図を作っていた僕は、言葉となる。

 

(今日はここまで! 5月11日)

(5月12日 再会)

 

 彼は駅が現れるのを待っていた、君が乗った列車は分からない。それでも彼は待っていた、自分に翼があることを信じて。そしてその翼で、天高く、あの底知れない海の空へ。天と地は逆になる、上が下で、下が上。或いは同じこと、そこから産まれる「なにか」。彼の心の中を少し知る、それは写真のよう。思い出が一つ、西日に照らされた木の下で、若者達は瞳の奥を知る。それがその時の、一つの真実で世界、飛べない世界。蜃気楼のように思わせる君の瞳、視線は未来を見る。揺れる、君の髪。その後ろに忽然と佇む、沈黙の影。歌が聴こえる、あの時の君の顔は、輝かないダイヤモンドのようだった。

 ここを見る者よ、君のポケットに設計図は入っているか。たった一つの彼の武器、傷付くことを知らずに勇気をくれる、それが、世界の設計図。彼がここまで作り上げてきた全て、そして君と僕のこれから。全ては言葉にできる、言葉は文章になる。設計図を作る、完成する時があるのだろうか。世界には謎が必要、謎がないと地球儀を回せない。大きな謎が解ける時は、命が芽吹く時か、散る時。彼は懐中電灯を取り出して、冒険家のような目で設計図を見る。これから冒険が始まる、これは序章に過ぎない。宇宙船を作ることと、世界の構造は同じ。設計図に綴る、僕の言葉。

 

 僕は呼ばれる、必要とする人の所へ、時間を泳ぐ。翼を持つ人の所へ行く、未来の道標。夜を気高く歩く彼、僕は彼を知っている。遠い昔から、心を泳いできた。心は海、僕は海の中にいる。そして僕の故郷は、卒業にある。彼は今も舞台に立っている、僕は彼に呼ばれる。僕らが出会うとき、それは全く異なるものへと変わる。そう、それは誰にでもなれる。僕らは大航海をする、いわゆる船。

 僕は夜の中を、大きな水飛沫を飛ばしながらごぉうと進む。時折魚が口に入ってくるから、ついでに潮を噴いて空へ飛ばしてあげる。そうしてあげるとたまに、いいことがある。僕が泳ぐと星座が変わる、月が近付いてくる。山が膨れる、風が吹く。家々が揺れて、人間は地震だと思うんだろうな。まるで、絵の具をぶちまけたように。

 

(今日はここまでです、煙草とエナドリ早くして下さい。5月12日)

(5月13日 再会)

 

 彼は設計図を広げて、なにか思案に耽るような顔をする。そうしてしばらく夜の真ん中に、ぽつんと立ち尽くしていると、ふいに顔を上げる。どこからともなく、君の声が聞こえた気がした。あるはずばない.....いるはずがない、彼はそう思う。君はとっくに朝日を零す列車に揺られて、iHARBORへ行ってしまっただろう。iHARBOR、君が行く理想郷の名前、今はそれだけしか分からない。夜を裂く音が、聴こえる。どこか遠くで上がる、花火の音を聴くように。そして人々は彼に近付いてくる、喧騒が暗闇の中に発生する。その刹那で彼は水浸しになった、どざぶぅーんと設計図から無数の小魚達と大きな鯨が飛び出てきたのである。

 

場面が変わる。

 

 そこは夜の海になった、流れる水は、即ち時間。海の中で自動販売機の灯りが地底を照らす、そこで飴色の水を飲む君の姿。鯨は大きな口をあんぐりと動かして、彼にこう述べる。「新しい世界へ飛び込む時がきた、君は潜水士」そうだ、彼は潜水士、深い海へ潜ることができる潜水士。人間とは可能性と不確定要素分、二つを持つ。彼は君のいる深い海へ潜る、人魚が見ている。だけど大丈夫、彼には鯨がいる。月の狭間の駅は、そこにある。

 

(今日はここまでしかできません、今日も一日お疲れ様でした。感想やスター待ってます。 5月13日)

(5月14日 再会)

 

 そして彼は深い海の底へ、君が待つ所へと潜る。人魚がやってくる、彼は人魚が好きだ、僕には分かる。色の白い、どこか影のある人魚。瞳の奥に影を見る、彼等はきっと心を知る仲だった。今はどうか、僕にも分からない。手を引かれる、そこに君はいるのか。鯨が見ている、小魚が一斉にこちらを見る。それは少し不気味で、何故だか不安になる。すると人魚がこう述べる「私は過去と今、私は女、私は白。あなたはなに?」、彼は戸惑う。「僕は過去、未来は知らない。僕は夢の中なのかも知れない」一瞬、その場の命ある者、全ての視線を彼は感じる。それはほんの一瞬だったが、彼には充分過ぎた。彼は視線を逸らし、君の元へ泳ぐ。泳ぎ方は知らない、そこに意思があるのならば自ずと進むべき。君は相変わらず飴色の水を飲む、徐々に君の小さな背中から、音色の翼が現れる。.....なにか、誰かが弾いているのだろうか、ピアノの音がする。君は翼を控えめに羽ばたかせた、君は海から消えたんだ、月の泡とともに。

 

 私は駅で列車待つ、ここがどこなのかは、とうに知れている。月の狭間の駅、ここから新世界へと旅立てる。あなたはこの駅を知っている?あなたにもいつか、この駅に立つ時がくると思う。いえ、それは誰にだって訪れるもの。悲しみと痛みと、自分を背負う若者達なら。地図を広げて待っていれば必ず訪れる、風を吹かす者達よ。私は奏でる、私の音を、私の楽譜を。それは音符となって私の前へ、ふわりと浮かぶ。あぁ、それは記憶と思い出。それらは確かに音を奏でる、それでも私は駅に立つ。朝日を零す列車に乗って、翼を持つ人に会いに行く。それは「新世界」、私は旅立つ、さようなら。全ての私、全ての麗しき想いで達。私は涙は零さない、私は涙は零さない、私は、さようなら。今、世界は変わろうとしている。

 

(今日はここまでにします、いつも短くてごめんなさい。5月14日)

 

※ 次回の題名は「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと王者の咆哮」になります。

 

(5月16日 再会)

 

 君は消えた、海の中から忽然と。鳥が空へ羽ばたくように、後に残るのは飴色の翼の欠片だけ。月の泡からぷくっと音がする、これは月の音。「駅とはなんだ。」彼は悩む、そうして海の底に辿り着く。そこは心の底、闇の中でぽつんと光る自動販売機。100円玉で買える温もり、彼は知っているか、この歌を。足元で翼の欠片がふわりとまう、彼はその翼を手に取り、辺りを見回す。そこはまさに夜の海、静寂が支配する空間に、自動販売機が動く音だけが響いている。所々に小さい石がある、その奥に広がるのは深い青と、どこまでも広がる星の砂。余りにも静かすぎる、鯨と人魚はどこへ行ってしまったのだろう、自動販売機が照らす砂の上に、一匹の赤いヒトデがいる。君が飲んでいた飴色の水はここで買えるようだ、見るとラムネ以外にはなにも売っていない。ボタンを押す、がこんっとともに出てきたラムネの瓶。中にはビー玉と飴色の水が入っている、蜂蜜色にぼんやりと輝く。ビー玉を覗くと、小さな銀河系が見える。「iHARBOR(アイ ハーバー)だ。」彼はぎょっとして、後ろを振り向くと僕がいる、僕は鯨、朝までを泳ぐ鯨。彼が持つ、翼の欠片に呼応するようにして、ビー玉の中の宇宙が変わる。そこに映し出されるのは月へ羽ばたく君の姿と、見知らぬ誰か。その誰かと彼の視線が交わる、誰かはなにかを叫んだようだった。すると少し間を空けて、うぉおおおおおおという咆哮が海の底へ届く。一瞬、海が大きく鼓動したように波を打つ。揺れる心の底で彼は僕の声を聴く、「波を掴め」と。

 

場面は戻る。

 

 「波を掴め」彼がはっとして設計図から顔を上げると、人魚が立っている。正しくは大人の女性だ、整った顔立ち、髪の毛の色は深い青で、肌は白い。すらりと伸びた手にはラムネの瓶と翼の欠片を持っている。夜の街で、彼と彼女は見つめ合う。

あなたの思い人は、この瓶の中にいるわ

そう述べると彼女はラムネの瓶を差し出す、彼はそれを手に取る。

「君は、iHARBORへの行き方を知っているのか」

彼がそう尋ねると、彼女は翼の欠片をひらひらと漂わせて遊び出す。

「その飴色の水は新しい世界への通行券、そのビー玉はコスモスへと繋がる。飴色の水を飲んだ時、あなたは月の狭間の駅へ行ける。あなたが過去、現在、未来の波を掴んだ時、世界は変わる

彼女はそれだけ言うと、足元でうろうろしていた赤いヒトデと会話を始めてしまった。

彼は少し戸惑ったが、ラムネの蓋を開け、ぼんやりと輝く水を飲む。

喉を鳴らす音に、ビー玉の中の世界が揺れる。

 

酔いが回ったようにグラつく視界の端で捉えたのは、宇宙船のような気がする。

 

(今日はここでお終い。5月16日)

(5月18日 再会)

 

 その宇宙船はとても巨大で、所々に隕石が衝突したような焼け焦げた後がある。先端は飛行機のようなコックピットになっていて、操縦士が一人。彼が目を覚ましたのは巨大な宇宙船の中にある、「月の狭間の駅」だった。彼は巨人が顔を覗かせるような、大きな窓から見える外を凝視していた。窓の外は彼が「潜水士」となって泳いでた、「心の底の海」だった、自動販売機の灯りが見えた。何億、何十億、何千億年前から銀河系をただよい、宇宙の外側まで見てきたであろうその宇宙船が、今度は夜の海の底を進んでいるのである。彼は前をみる、微動だにしない操縦士がいる。水の中を進む、独特の音がする。恐る恐る顔を覗いて見ると、まるで時が止まったかのような、先程までの人魚が、操縦桿を握っていた。

 

 そろそろ彼は月の狭間の駅に入った頃だろうか、君が一体誰とiHARBORに行ったのかは僕も知らない。僕ができることは、ただ彼に声を伝え、彼が落としていった心の欠片を拾い集め、再び彼等に届けることだけ。僕は彼の味方でなくちゃならない、これはこの先も変わらない。君には遂に翼が生まれてしまったか、新しい世界の空を、僕たちも飛びたい。風に乗って、ふわりと浮かぶ感覚を、彼にも教えてあげたい。その空に、不純物はない。本当に大切な人、本当に大事な物、そういうのには翼を与えて、誰も知らない世界へと飛ばすんだ。この彼の心の欠片を届ける時、それが過去と今、そして未来と可能性が交差する時なんだ。

 

 どうやら彼は、ここが月の狭間の駅、そしてそれを含んでいるのがこの宇宙船。その宇宙船の名は、「サンタクロース」。駅には列車がくる、そこに待ち人がいるなれば、これは自然なこと。偶然ではなく、必然。列車というものは人を目的地へと届ける乗り物、これも必然。では彼の場合、駅に宇宙船がきたのである。これは偶然と、人間が持つ不確定要素分の内の一つ。これから彼は駅を出て、世界へ行くのである。

 ふいに前を見据えたままの人魚が口を開く、「リンドバーグは、宇宙の外側がどうなってるか、知ってる?」リンドバーグというのは彼の名前である。

 

(ここまで、鬼滅の刃面白いです。5月18日)

(5月21日 再会)

 

 「宇宙の外側.....」彼には全く想像ができない、宇宙ならまだしも外側など。

「宇宙の外側には、衝動があるの」彼女はそう述べると、じろっと彼を見た。

そこはなに一つない空間にたった一色、色があるの。その色は、人がこの世に生まれる衝動そのもの。宇宙の外側で、人は産まれているの。あなた達は私からすると、宇宙人に違いない」

彼は黙って彼女の話を聞く。

「その衝動の色を知る者が、この世にはいる。外側を理解し、意味を見付けた人がこの世にはいる」

彼の乗るサンタクロースが、ごくんと揺れた。

 

 私はその時、月に向かって宙を羽ばたいていた。漆黒の宇宙には無数の銀河系が見える、あの銀河系一つ一つに私がいると、チャールズに教えてもらった。私が駅で列車を待っていると、チャールズが迎えに来てくれた。星の翼を優しく羽ばたかせて、私たちは二人で彼が知らない世界へと飛ぶ。私が求めていた翼を持つ者、でもチャールズはたまに吠える。どうしてなのかは分からない、チャールズも私と同じように、鯨が怖いのかも知れない。鯨には、時間と空間を越える力があるから。

 

 宇宙船「サンタクロース」が揺れる、足元がおぼつかないほど。まるで海の海底からなにか巨大なものが出てくるよう。

「なんだ!?」彼は椅子にしがみつく、「ここは駅」人魚が言う。

駅には待ち人を届ける「なにか」が現れる、そしてこの宇宙船は夢を届ける。

「もうすぐ着くわ」

「.....どこに」

「地底の月」

 

(ここまでにします。起用転転転転転、、、。 次回はサブの題名を変えます。 5月21日)

(5月24日 再会)

 

 どすんと船内に音が響き揺れる、どどどどどっと海底を擦る音が聞こえる。凄まじい振動だ、立つことがままならない、どこかに不時着したようだ。どごんっと一回大きな音が響いた、それきり音はしなくなる。彼は顔を上げ窓から外を見ると、海底には砂埃が渦を巻いて、辺りを漂っている。人魚はゆらりと立ち上がると、彼の手を引き「降りて」とだけ述べた。

まるで古い屋敷の巨大な扉を開けるようにして、コックピットの上部が開いた。彼は驚く、そこは一言で言ってしまえば「月」に不時着していたのである。彼はもう一度船内に戻り、窓の外を確認する、先程までの砂埃が海底に漂っている、少し落ち着いてきたようだ。

「言葉が出ない?」人魚が傍らに立つ。

「ここは海でもあり、宇宙でもあるの。どちらにしても、ここは月」そう言うと人魚は、彼を外へ連れ出した。

「.....見て、あの銀河系一つ一つにあなたがいるの」

珍しい虫を見付けた子供のように指を差す、その横顔は確かに「人魚」を思わせる。

「どうして月に.....」

「あなたがiHARBORを求めたから」

「理想郷は月にあるのか、どこに」

「あそこは理想郷、なんて優しい所じゃないわ。時期に二人とも来るから」

「.....。」

彼が唖然と漆黒の宇宙を見ていると、地球の方面からなにか、翼をもつ者が二人飛んでくる。

「チャールズと、あなたのお嬢さんよ」

 

 私がそっと翼を羽ばたかせて降り立つと、月の粉が少し舞う。空中に漂う砂埃を見ると、確かにここは無重力なのだと思う。リンドバーグと目が合う、話すことは、なにもない。彼は私を泣かせたから。私も同じように、彼を泣かせたけど。ぐるりと辺りを見回すと、始めて人類が着陸したアポロ、残された星条旗が静かに残されている。人類の歴史は、沈黙とともにある。月は静か過ぎる、大きなものの存在を感じる。

「.....iHARBORは月の裏側にある、理想郷とは、いつも隠されているんだ」

チャールズはそう言うと、私に赤いヒトデを渡してきた。

「ヒトデ?...何故?」

「君とiHARBORに行く可能性もある、或いは君と彼(リンドバーグ)が行くこともありえる。過去と今、未来の可能性が交差する。でも、すべてを知る鯨は今、彼の心にいるからな。君と彼がそこへ行け。

チャールズは「ここで人魚と待っている」と、それだけ言い残し、サンタクロースの中に閉じこもってしまった。

 

 彼もまた、同じように人魚から「翼の欠片」を受け取っていた。人魚は彼を見つめると、こう話した。

リンドバーグとお嬢さんが持つ『翼の欠片』と『赤いヒトデ』は、あなた達二人の心の欠片。いい?あなたはお嬢さんの欠片を持ち、お嬢さんはあなたの欠片を持っているの。iHARBORから帰る時に使えるの、それは乗車券、二人は忘れ物をしている。私はチャールズとサンタクロースで待っているから、あなた達二人の可能性次第では、私たちはここに戻って来てもいない。でもそれは、『死』や悲しむことではないの、交差しただけ、すべての事象と可能性が。」

 

こうして二人は、月に取り残される。iHARBORは、月の裏側にあるらしい。

 

(ここまで。5月24日)

(5月26日 再会)

 

 彼女と話すことはなにもない、お互いに口を閉ざしたまま月の地に佇んでいる。古くから人類は、月に惹かれ焦がれている。誰もがあそこへ行きたいと、行ってみたいと思ったはずである。その初動が探求への道、その先にある理想郷。静寂が支配する宇宙、遥か遠くで人が産まれる鼓動が、そして近くで何者かの寝息が聴えるではないか。リンドバーグが痕跡に気付く、目を丸くして。その痕跡とは、車輪が通ったような跡、まるで列車のようだ。その痕跡の向こうで手を振るのは、潜水士の姿をした「誰か」。「行こう.....」とリンドバーグが言う、少し後ろから彼女は翼を羽ばたかせながら着いて来る。

 

 僕には正体というものがない、或いは鯨、或いは人、或いは未確認飛行物体。君の中にある大きな、君では手に負えないもの、そのものなんだ。だから僕の名前は人によって呼び方が異なる、リンドバーグから「鯨」と名付けられただけ。僕は宇宙の外側で産まれた、人の感情はそこで生まれる。心は、海の底でも空でもない、君の知らない宇宙の外側にある。僕は君たちのすべてと繋がっている、糸ではなく優しさで。時間、空間、距離、すべての事象を変える可能性がある。僕は望む人の所へ行く、言うなれば大航海。

 

 彼女の翼からは悲しみと、喜びと、新しい音が微かに聞こえる。リンドバーグは耳を澄ませる、あの夜のこと。彼女の泣き声が聞こえる気がする、ここは現実なのか妄想なのか。リンドバーグは地図を広げたまま立ち尽くしている、今はどうだろうか。こうして彼女の元に追いついたかも知れないのに、言葉では表せない感情が心を埋める。その感情に敢えて色を付けるとしたら、その色は「月の色」。そしてその感情近い感情を表すとしたら、駅で乗るかも分からない列車を待つ時。

 

 やがて彼等が歩くその先に、小さな建築物が見えて来た。「あれは、なんだ。」

 

(ここまでにします、今日もお疲れ様です。 5月26日)

(5月30日 再会)

 

 それはどこか古風な地球儀、子供の背丈くらいはあるだろうか。月の裏側には地球儀が一つ、ぽつんと置かれていたのである。先程までの潜水士が、今度は駅員の姿をして二人の後ろに立つ。

「ここは、iHARBOR」駅員は帽子を深く被り直す。

「ここが?私の求めていた理想郷なの?」彼女は唖然とする。

「その地球儀を回してごらん」

リンドバーグは言われたままに、地球儀をくるくると回す。

すると地球儀の中に記憶が写し出される、笑顔で公園を歩く姿、喧嘩をする姿、友人と旅をする姿、一人で悩む姿。この記憶はどうやら、僕たち二人の記憶らしいが、その中に覚えのない記憶も見える。

「この地球儀は、過去、現在、未来を含めている。だから可能性の一つとして、君たちがこれから歩む、未来も含まれている」

そして駅員は銀河を見ながらさらに続ける。

「ここは理想郷だから、その記憶の中に飛び込めば、君たち二人が望む所へ帰れる。つまり、二人が出会わなかった場合の世界も可能、思い通りというわけさ。ただし、そこへ飛び込めばもう二度と、悲しみの涙を流すことはできない。それが唯一の条件。」

 

 リンドバーグは困惑していた、同時に思案していた。この駅員の言うことは分かる、行きたい記憶へ行ける。そんなことが許されるのか、許されるのであれば、今すぐ飛び込みたい。誰も泣かない所へと、そこには微笑みしかない。ただし悲しみの涙は流せない、涙が流せないから、だからなにか。困ることがあるのか、苦しみ、辛さ、悲しみから解放されるのであれば、なにも惜しむことはない。たかが、涙くらい。ふと、隣を見ると、彼女は今にも新世界へ飛び込もうとしていた。

 

 ぽちゃん.....まるで水面に雫が一つ落ちるがごとく、彼女はiHARBORへ飛び込んだ。翼が、小さく羽ばたいた。彼女は今、目の前で回る地球儀の中に羽ばたいていった。よほど今が辛かったに違いない、リンドバーグにはそれが少し理解できる。人の心の中を、完璧に理解することなどできないのだから。

 

(この小説作ってると疲れるのでここまでにします。)

待ち人たち。

・即ち待ち惚け

 私は待ち人が好き、なんだってそう。何かを、誰かを待っている人、私もそう。電車を待つ人、タクシーを待つ人、ヒッチハイクをする人。凄く良いと思う、待てばいいと思う。私は流れに身を任せるだけ、そういう生き方もいい。

 

 ただ待つ、その辛さや、痛みを知っている人は、とても優しいと思う。そして待ち人の求める人に、或いは物を、届けてあげたいと思う。地図を広げて、恋を待つ人、愛を待つ人、夢、星、時、すべていつか終わる。「いつか」ではなくて、「必ず」私たちは終わる。苦しみや辛さ、喜びや悲しみから解き放たれる。その先を見据えた時、見えてくるのは次の時代。

 

 私は、悲しみよりも喜びの方が多い方がいい。そんなことは言わない、勿論そうなれたらいいけど、至極難しい。だからすべてを同等に知りたい、同等に味わいたい。そしていなくなる、優しさだけ残して。

君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(2)

・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。

 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足で、駅へと向かう。

 君は結局強くて、しっかりしていて、彼より頭がいい時がある。そこにいては鯨に食べられてしまうだろう、鳴き声がこの街に響く。彼の耳にはきっと違う声が聞こえていたはず、それは現実的で曖昧的でどこか夢の国。そこは現実と夢の狭間、そこで彼等は優しい風を待つ。頬を温めるような、小さく光る風。彼は歩く、足があるから。理由はそうだったように思う、夜は深まる。

 

(2020年 5月10日)

(5月11日 再会)

 

 世界は昼の中にはない、夜の中にこそ新しい世界がある。まだ見たことがない、誰も知らない新しい世界。彼はその世界を、まだ知らない。君は夜に戻ることをやめた、「私はお日様が好き」と言って立ち上がる。僕は今、それを見ている。時計に意味はない。

 

 私は立ち上がる、海に沈めた欠片を置いて。そして知らない、まだ見ぬ世界。誰も知らない未来。私はそこに行く、どこか遠くの知らない駅から。私の世界を変えることは、誰にもさせない。私はそういう頑固な所がある、それは知っている。誰にも邪魔されたくない、夜は一人にして欲しいの。女の子は皆、動物が好き。私も鯨は好きだけど、私のことをどう思っているのかは知らない。動物と会話がしたい、私が話したいのは彼じゃなくて、新しい世界に翼がある人。彼の翼は知っている、その色と、空への飛び方も。だから知らないことを知る、これは興味本位。分かって欲しい、私も心の痛みは知っている。同じ痛みはない、誰にも、皆違う。駅には私一人、きっと彼は来るでしょう。夜の中から、鯨とともに。

 

 僕は大きな物を持っている、大きな人を待っている。見えるだろうか、伝わるだろうか、全ての僕たちへ。そして僕の世界たち、今、僕はここにいる。大きな地図を広げて、風を待っている若者達。僕が「今」を知っている、その先の未来と、出会いを。戻らないことも世の中にはある、未来の大きな人に託す。過去と、今と、未来が交差する。僕はそこから産まれた鯨、大きな、大きなヒーローでもあり、僕は悲しみそのもの。時計の針が戻る、秒針の音が鳴る。人を呼ぶ、虹を見る、夢を伝える。僕は全て、そこからの未来。君たちは知らない、僕が新しい世界。僕は夜から来た、コンパスはいらない。心は道標になる、だけど優しさを知る者しか分からない。音色とともに設計図を作っていた僕は、言葉となる。

 

(今日はここまで! 5月11日)

(5月12日 再会)

 

 彼は駅が現れるのを待っていた、君が乗った列車は分からない。それでも彼は待っていた、自分に翼があることを信じて。そしてその翼で、天高く、あの底知れない海の空へ。天と地は逆になる、上が下で、下が上。或いは同じこと、そこから産まれる「なにか」。彼の心の中を少し知る、それは写真のよう。思い出が一つ、西日に照らされた木の下で、若者達は瞳の奥を知る。それがその時の、一つの真実で世界、飛べない世界。蜃気楼のように思わせる君の瞳、視線は未来を見る。揺れる、君の髪。その後ろに忽然と佇む、沈黙の影。歌が聴こえる、あの時の君の顔は、輝かないダイヤモンドのようだった。

 ここを見る者よ、君のポケットに設計図は入っているか。たった一つの彼の武器、傷付くことを知らずに勇気をくれる、それが、世界の設計図。彼がここまで作り上げてきた全て、そして君と僕のこれから。全ては言葉にできる、言葉は文章になる。設計図を作る、完成する時があるのだろうか。世界には謎が必要、謎がないと地球儀を回せない。大きな謎が解ける時は、命が芽吹く時か、散る時。彼は懐中電灯を取り出して、冒険家のような目で設計図を見る。これから冒険が始まる、これは序章に過ぎない。宇宙船を作ることと、世界の構造は同じ。設計図に綴る、僕の言葉。

 

 僕は呼ばれる、必要とする人の所へ、時間を泳ぐ。翼を持つ人の所へ行く、未来の道標。夜を気高く歩く彼、僕は彼を知っている。遠い昔から、心を泳いできた。心は海、僕は海の中にいる。そして僕の故郷は、卒業にある。彼は今も舞台に立っている、僕は彼に呼ばれる。僕らが出会うとき、それは全く異なるものへと変わる。そう、それは誰にでもなれる。僕らは大航海をする、いわゆる船。

 僕は夜の中を、大きな水飛沫を飛ばしながらごぉうと進む。時折魚が口に入ってくるから、ついでに潮を噴いて空へ飛ばしてあげる。そうしてあげるとたまに、いいことがある。僕が泳ぐと星座が変わる、月が近付いてくる。山が膨れる、風が吹く。家々が揺れて、人間は地震だと思うんだろうな。まるで、絵の具をぶちまけたように。

 

(今日はここまでです、煙草とエナドリ早くして下さい。5月12日)

(5月13日 再会)

 

 彼は設計図を広げて、なにか思案に耽るような顔をする。そうしてしばらく夜の真ん中に、ぽつんと立ち尽くしていると、ふいに顔を上げる。どこからともなく、君の声が聞こえた気がした。あるはずばない.....いるはずがない、彼はそう思う。君はとっくに朝日を零す列車に揺られて、iHARBORへ行ってしまっただろう。iHARBOR、君が行く理想郷の名前、今はそれだけしか分からない。夜を裂く音が、聴こえる。どこか遠くで上がる、花火の音を聴くように。そして人々は彼に近付いてくるように、喧騒が暗闇の中に発生する。その刹那で彼は水浸しになった、どざぶぅーんと設計図から無数の小魚達と大きな鯨が飛び出てきたのである。

 

場面が変わる。

 

 そこは夜の海になった、流れる水は、即ち時間。海の中で自動販売機の灯りが地底を照らす、そこで飴色の水を飲む君の姿。鯨は大きな口をあんぐりと動かして、彼にこう述べる。「新しい世界へ飛び込む時がきた、君は潜水士」そうだ、彼は潜水士、深い海へ潜ることができる潜水士。人間とは可能性と不確定要素分、二つを持つ。彼は君のいる深い海へ潜る、人魚が見ている。だけど大丈夫、彼には鯨がいる。月の狭間の駅は、そこにある。

 

(今日はここまでしかできません、今日も一日お疲れ様でした。感想やスター待ってます。 5月13日)

(5月14日 再会)

 

 そして彼は深い海の底へ、君が待つ所へと潜る。人魚がやってくる、彼は人魚が好きだ、僕には分かる。色の白い、どこか影のある人魚。瞳の奥に影を見る、彼等はきっと心を知る仲だった。今はどうか、僕にも分からない。手を引かれる、そこに君はいるのか。鯨が見ている、小魚が一斉にこちらを見る。それは少し不気味で、何故だか不安になる。すると人魚がこう述べる「私は過去と今、私は女、私は白。あなたはなに?」、彼は戸惑う。「僕は過去、未来は知らない。僕は夢の中なのかも知れない」一瞬、その場の命ある者、全ての視線を彼は感じる。それはほんの一瞬だったが、彼には充分過ぎた。彼は視線を逸らし、君の元へ泳ぐ。泳ぎ方は知らない、そこに意思があるのならば自ずと進むべき。君は相変わらず飴色の水を飲む、徐々に君の小さな背中から、音色の翼が現れる。.....なにか、誰かが弾いているのだろうか、ピアノの音がする。君は翼を控えめに羽ばたかせた、君は海から消えたんだ、月の泡とともに。

 

 私は駅で列車待つ、ここがどこなのかは、とうに知れている。月の狭間の駅、ここから新世界へと旅立てる。あなたはこの駅を知っている?あなたにもいつか、この駅に立つ時がくると思う。いえ、それは誰にだって訪れるもの。悲しみと痛みと、自分を背負う若者達なら。地図を広げて待っていれば必ず訪れる、風を吹かす者達よ。私は奏でる、私の音を、私の楽譜を。それは音符となって私の前へ、ふわりと浮かぶ。あぁ、それは記憶と思い出。それらは確かに音を奏でる、それでも私は駅に立つ。朝日を零す列車に乗って、翼を持つ人に会いに行く。それは「新世界」、私は旅立つ、さようなら。全ての私、全ての麗しき想いで達、全ての小魚達。私は涙は零さない、私は涙は零さない、私は、さようなら。今、世界は変わろうとしている。

 

(今日はここまでにします、いつも短くてごめんなさい。5月14日)

 

※ 次回の題名は「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと王者の咆哮」になります。

 

(5月16日 再会)

 

 君は消えた、海の中から忽然と。鳥が空へ羽ばたくように、後に残るのは飴色の翼の欠片だけ。月の泡からぷくっと音がする、これは月の音。「駅とはなんだ。」彼は悩む、そうして海の底に辿り着く。そこは心の底、闇の中でぽつんと光る自動販売機。100円玉で買える温もり、彼は知っているか、この歌を。足元で翼の欠片がふわりとまう、彼はその翼を手に取り、辺りを見回す。そこはまさに夜の海、静寂が支配する空間に、自動販売機が動く音だけが響いている。所々に小さい石がある、その奥に広がるのは深い青と、どこまでも広がる星の砂。余りにも静かすぎる、鯨と人魚はどこへ行ってしまったのだろう、自動販売機が照らす砂の上に、一匹の赤いヒトデがいる。君が飲んでいた飴色の水はここで買えるようだ、見るとラムネ以外にはなにも売っていない。ボタンを押す、がこんっとともに出てきたラムネの瓶。中にはビー玉と飴色の水が入っている、蜂蜜色にぼんやりと輝く。ビー玉を覗くと、小さな銀河系が見える。「iHARBOR(アイ ハーバー)だ。」彼はぎょっとして、後ろを振り向くと僕がいる、僕は鯨、朝までを泳ぐ鯨。彼が持つ、翼の欠片に呼応するようにして、ビー玉の中の宇宙が変わる。そこに映し出されるのは月へ羽ばたく君の姿と、見知らぬ誰か。その誰かと彼の視線が交わる、誰かはなにかを叫んだようだった。すると少し間を空けて、うぉおおおおおおという咆哮が海の底へ届く。一瞬、海が大きく鼓動したように波を打つ。揺れる心の底で彼は僕の声を聴く、「波を掴め」と。

 

場面は戻る。

 

 「波を掴め」彼がはっとして設計図から顔を上げると、人魚が立っている。正しくは大人の女性だ、整った顔立ち、髪の毛の色は深い青で、肌は白い。すらりと伸びた手にはラムネの瓶と翼の欠片を持っている。夜の街で、彼と彼女は見つめ合う。

「あなたの思い人は、この瓶の中にいるわ」

そう述べると彼女はラムネの瓶を差し出す、彼はそれを手に取る。

「君は、iHARBORへの行き方を知っているのか」

彼がそう尋ねると、彼女は翼の欠片をひらひらと漂わせて遊び出す。

「その飴色の水は新しい世界への通行券、そのビー玉はコスモスへと繋がる。飴色の水を飲んだ時、あなたは月の狭間の駅へ行ける。あなたが過去、現在、未来の波を掴んだ時、世界は変わる

彼女はそれだけ言うと、足元でうろうろしていた赤いヒトデと会話を始めてしまった。

彼は少し戸惑ったが、ラムネの蓋を開け、ぼんやりと輝く水を飲む。

喉を鳴らす音に、ビー玉の中の世界が揺れる。

 

酔いが回ったようにグラつく視界の端で捉えたのは、宇宙船のような気がする。

 

(今日はここでお終い。5月16日)

(5月18日 再会)

 

 その宇宙船はとても巨大で、所々に隕石が衝突したような焼け焦げた後がある。先端は飛行機のようなコックピットになっていて、操縦士が一人。彼が目を覚ましたのは巨大な宇宙船の中にある、「月の狭間の駅」だった。彼は巨人が顔を覗かせるような、大きな窓から見える外を凝視していた。窓の外は彼が「潜水士」となって泳いでた、「心の底の海」だった、自動販売機の灯りが見えた。何億、何十億、何千億年前から銀河系をただよい、宇宙の外側まで見てきたであろうその宇宙船が、今度は夜の海の底を進んでいるのである。彼は前をみる、微動だにしない操縦士がいる。水の中を進む、独特の音がする。恐る恐る顔を覗いて見ると、まるで時が止まったかのような、先程までの人魚が操縦桿を握っていた。

 

 そろそろ彼は月の狭間の駅に入った頃だろうか、君が一体誰とiHARBORに行ったのかは僕も知らない。僕ができることは、ただ彼に声を伝え、彼が落としていった心の欠片を拾い集め、再び彼等に届けることだけ。僕は彼の味方でなくちゃならない、これはこの先も変わらない。君には遂に翼が生まれてしまったか、新しい世界の空を、僕たちも飛びたい。風に乗って、ふわりと浮かぶ感覚を、彼にも教えてあげたい。その空に、不純物はない。本当に大切な人、本当に大事な物、そういうのには翼を与えて、誰も知らない世界へと飛ばすんだ。この彼の心の欠片を届ける時、それが過去と今、そして未来と可能性が交差する時なんだ。

 

 どうやら彼は、ここが月の狭間の駅、そしてそれを含んでいるのがこの宇宙船。その宇宙船の名は、「サンタクロース」。駅には列車がくる、そこに待ち人がいるなれば、これは自然なこと。偶然ではなく、必然。列車というものは人を目的地へと届ける乗り物、これも必然。では彼の場合、駅に宇宙船がきたのである。これは偶然と、人間が持つ不確定要素分の内の一つ。これから彼は駅を出て、世界へ行くのである。

 ふいに前を見据えたままの人魚が口を開く、「リンドバーグは、宇宙の外側がどうなってるか、知ってる?」リンドバーグというのは彼の名前である。

 

(ここまで、鬼滅の刃面白いです。5月18日)

(5月21日 再会)

 

 「宇宙の外側.....」彼には全く想像ができない、宇宙ならまだしも外側など。

「宇宙の外側には、衝動があるの」彼女はそう述べると、じろっと彼を見た。

そこはなに一つない空間にたった一色、色があるの。その色は、人がこの世に生まれる衝動そのもの。宇宙の外側で、人は産まれているの。あなた達は私からすると、宇宙人に違いない」

彼は黙って彼女の話を聞く。

「その衝動の色を知る者が、この世にはいる。外側を理解し、意味を見付けた人がこの世にはいる」

彼の乗るサンタクロースが、ごくんと揺れた。

 

 私はその時、月に向かって宙を羽ばたいていた。漆黒の宇宙には無数の銀河系が見える、あの銀河系一つ一つに私がいると、チャールズに教えてもらった。私が駅で列車を待っていると、チャールズが迎えに来てくれた。星の翼を優しく羽ばたかせて、私たちは二人で彼が知らない世界へと飛ぶ。私が求めていた翼を持つ者、でもチャールズはたまに吠える。どうしてなのかは分からない、チャールズも私と同じように、鯨が怖いのかも知れない。鯨には、時間と空間を越える力があるから。

 

 宇宙船「サンタクロース」が揺れる、足元がおぼつかないほど。まるで海の海底からなにか巨大なものが出てくるよう。

「なんだ!?」彼は椅子にしがみつく、「ここは駅」人魚が言う。

駅には待ち人を届ける「なにか」が現れる、そしてこの宇宙船は夢を届ける。

「もうすぐ着くわ」

「.....どこに」

「地底の月」

 

(ここまでにします。起用転転転転転、、、。 次回はサブの題名を変えます。 5月21日)

(5月24日 再会)

 

 どすんと船内に音が響き揺れる、どどどどどっと海底を擦る音が聞こえる。凄まじい振動だ、立つことがままならない、どこかに不時着したようだ。どごんっと一回大きな音が響いた、それきり音はしなくなる。彼は顔を上げ窓から外を見ると、海底には砂埃が渦を巻いて、辺りを漂っている。人魚はゆらりと立ち上がると、彼の手を引き「降りて」とだけ述べた。

まるで古い屋敷の巨大な扉を開けるようにして、コックピットの上部が開いた。彼は驚く、そこは一言で言ってしまえば「月」に不時着していたのである。彼はもう一度船内に戻り、窓の外を確認する、先程までの砂埃が海底に漂っている、少し落ち着いてきたようだ。

「言葉が出ない?」人魚が傍らに立つ。

「ここは海でもあり、宇宙でもあるの。どちらにしても、ここは月」そう言うと人魚は、彼を外へ連れ出した。

「.....見て、あの銀河系一つ一つにあなたがいるの」

珍しい虫を見付けた子供のように指を差す、その横顔は確かに「人魚」を思わせる。

「どうして月に.....」

「あなたがiHARBORを求めたから」

「理想郷は月にあるのか、どこに」

「あそこは理想郷、なんて優しい所じゃないわ。時期に二人とも来るから」

「.....。」

彼が唖然と漆黒の宇宙を見ていると、地球の方面からなにか、翼をもつ者が二人飛んでくる。

「チャールズと、あなたのお嬢さんよ」

 

 私がそっと翼を羽ばたかせて降り立つと、月の粉が少し舞う。空中に漂う砂埃を見ると、確かにここは無重力なのだと思う。リンドバーグと目が合う、話すことは、なにもない。彼は私を泣かせたから。私も同じように、彼を泣かせたけど。ぐるりと辺りを見回すと、始めて人類が着陸したアポロ、残された星条旗が静かに残されている。人類の歴史は、沈黙とともにある。月は静か過ぎる、大きなものの存在を感じる。

「.....iHARBORは月の裏側にある、理想郷とは、いつも隠されているんだ」

チャールズはそう言うと、私に赤いヒトデを渡してきた。

「ヒトデ?...何故?」

「君とiHARBORに行く可能性もある、或いは君と彼(リンドバーグ)が行くこともありえる。過去と今、未来の可能性が交差する。でも、すべてを知る鯨は今、彼の心にいるからな。君と彼がそこへ行け。」

チャールズは「ここで人魚と待っている」と、それだけ言い残し、サンタクロースの中に閉じこもってしまった。

 

 彼もまた、同じように人魚から「翼の欠片」を受け取っていた。人魚は彼を見つめると、こう話した。

リンドバーグとお嬢さんが持つ『翼の欠片』と『赤いヒトデ』は、あなた達二人の心の欠片。いい?あなたはお嬢さんの欠片を持ち、お嬢さんはあなたの欠片を持っているの。iHARBORから帰る時に使えるの、それは乗車券、二人は忘れ物をしている。私はチャールズとサンタクロースで待っているから、あなた達二人の可能性次第では、私たちはここに戻って来てもいない。でもそれは、『死』や悲しむことではないの、交差しただけ、すべての事象と可能性が。」

 

こうして二人は、月に取り残される。iHARBORは、月の裏側にあるらしい。

 

(ここまで。5月24日)

(5月26日 再会)

 

 彼女と話すことはなにもない、お互いに口を閉ざしたまま月の地に佇んでいる。古くから人類は、月に惹かれ焦がれている。誰もがあそこへ行きたいと、行ってみたいと思ったはずである。その初動が探求への道、その先にある理想郷。静寂が支配する宇宙、遥か遠くで人が産まれる鼓動が、そして近くで何者かの寝息が聴えるではないか。リンドバーグが痕跡に気付く、目を丸くして。その痕跡とは、車輪が通ったような跡、まるで列車のようだ。その痕跡の向こうで手を振るのは、潜水士の姿をした「誰か」。「行こう.....」とリンドバーグが言う、少し後ろから彼女は翼を羽ばたかせながら着いて来る。

 

 僕には正体というものがない、或いは鯨、或いは人、或いは未確認飛行物体。君の中にある大きな、君では手に負えないもの、そのものなんだ。だから僕の名前は人によって呼び方が異なる、リンドバーグから「鯨」と名付けられただけ。僕は宇宙の外側で産まれた、人の感情はそこで生まれる。心は、海の底でも空でもない、君の知らない宇宙の外側にある。僕は君たちのすべてと繋がっている、糸ではなく優しさで。時間、空間、距離、すべての事象を変える可能性がある。僕は望む人の所へ行く、言うなれば大航海。

 

 彼女の翼からは悲しみと、喜びと、新しい音が微かに聞こえる。リンドバーグは耳を澄ませる、あの夜のこと。彼女の泣き声が聞こえる気がする、ここは現実なのか妄想なのか。リンドバーグは地図を広げたまま立ち尽くしている、今はどうだろうか。こうして彼女の元に追いついたかも知れないのに、言葉では表せない感情が心を埋める。その感情に敢えて色を付けるとしたら、その色は「月の色」。そしてその感情近い感情を表すとしたら、駅で乗るかも分からない列車を待つ時。

 

 やがて彼等が歩くその先に、小さな建築物が見えて来た。「あれは、なんだ。」

 

(ここまでにします、今日もお疲れ様です。 5月26日)

幻のラムネ。

夜の匂い、滲む額の汗、小川のせせらぎ

人混みの喧騒、若者の話し声、屋台の白煙

ここは夜祭り。

 

屋台のどこかに、幻のラムネが売られている、それは飴色。

月のビー玉が入っており、味は蜂蜜に近いが、ねっとりしておらず。

乾いた喉をすっと優しく、潤してくれる、まさに宝石。

 

どこかにある、本当に大切な宝石は、誰の手にも入らない。

誰も知らない、知ることが出来ないが、夜祭りの中にある。

どこまでも連なる人混み、浴衣姿で歩く人々、金魚を持つ子供。

 

その幻のラムネを飲むと、文字通り世界が変わる、あの頃へ。

人混みの中に佇む人が、在処を知っている、それは人から最も遠い人。

ゆくゆくは君になり、或いは概念になり、そして眩い金魚になる。

 

これを妄想だと思うだろう、世界には知らないことがある、知るべきことがある。

あってもいいだろう、その可能性が、幻のラムネを出現させる。

鍵はそこにある。

君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体。

・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。

 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足で、駅へと向かう。

 君は結局強くて、しっかりしていて、彼より頭がいい時がある。そこにいては鯨に食べられてしまうだろう、鳴き声がこの街に響く。彼の耳にはきっと違う声が聞こえていたはず、それは現実的で曖昧的でどこか夢の国。そこは現実と夢の狭間、そこで彼等は優しい風を待つ。頬を温めるような、小さく光る風。彼は歩く、足があるから。理由はそうだったように思う、夜は深まる。

 

(2020年5月10日)

(5月11日 再会)

 

 世界は昼の中にはない、夜の中にこそ新しい世界がある。まだ見たことがない、誰も知らない新しい世界。彼はその世界を、まだ知らない。君は夜に戻ることをやめた、「私はお日様が好き」と言って立ち上がる。僕は今、それを見ている。時計に意味はない。

 

 私は立ち上がる、海に沈めた欠片を置いて。そして知らない、まだ見ぬ世界。誰も知らない未来。私はそこに行く、どこか遠くの知らない駅から。私の世界を変えることは、誰にもさせない。私はそういう頑固な所がある、それは知っている。誰にも邪魔されたくない、夜は一人にして欲しいの。女の子は皆、動物が好き。私も鯨は好きだけど、私のことをどう思っているのかは知らない。動物と会話がしたい、私が話したいのは彼じゃなくて、新しい世界に翼がある人。彼の翼は知っている、その色と、空への飛び方も。だから知らないことを知る、これは興味本位。分かって欲しい、私も心の痛みは知っている。同じ痛みはない、誰にも、皆違う。駅には私一人、きっと彼は来るでしょう。夜の中から、鯨とともに。

 

 僕は大きな物を持っている、大きな人を待っている。見えるだろうか、伝わるだろうか、全ての僕たちへ。そして僕の世界たち、今、僕はここにいる。大きな地図を広げて、風を待っている若者達。僕が「今」を知っている、その先の未来と、出会いを。戻らないことも世の中にはある、未来の大きな人に託す。過去と、今と、未来が交差する。僕はそこから産まれた鯨、大きな、大きなヒーローでもあり、僕は悲しみそのもの。時計の針が戻る、秒針の音が鳴る。人を呼ぶ、虹を見る、夢を伝える。僕は全て、そこからの未来。君たちは知らない、僕が新しい世界。僕は夜から来た、コンパスはいらない。心は道標になる、だけど優しさを知る者しか分からない。音色とともに設計図を作っていた僕は、言葉となる。

 

(今日はここまで! 5月11日)

(5月12日 再会)

 

 彼は駅が現れるのを待っていた、君が乗った列車は分からない。それでも彼は待っていた、自分に翼があることを信じて。そしてその翼で、天高く、あの底知れない海の空へ。天と地は逆になる、上が下で、下が上。或いは同じこと、そこから産まれる「なにか」。彼の心の中を少し知る、それは写真のよう。思い出が一つ、西日に照らされた木の下で、若者達は瞳の奥を知る。それがその時の、一つの真実で世界、飛べない世界。蜃気楼のように思わせる君の瞳、視線は未来を見る。揺れる、君の髪。その後ろに忽然と佇む、沈黙の影。歌が聴こえる、あの時の君の顔は、輝かないダイヤモンドのようだった。

 ここを見る者よ、君のポケットに設計図は入っているか。たった一つの彼の武器、傷付くことを知らずに勇気をくれる、それが、世界の設計図。彼がここまで作り上げてきた全て、そして君と僕のこれから。全ては言葉にできる、言葉は文章になる。設計図を作る、完成する時があるのだろうか。世界には謎が必要、謎がないと地球儀を回せない。大きな謎が解ける時は、命が芽吹く時か、散る時。彼は懐中電灯を取り出して、冒険家のような目で設計図を見る。これから冒険が始まる、これは序章に過ぎない。宇宙船を作ることと、世界の構造は同じ。設計図に綴る、僕の言葉。

 

 僕は呼ばれる、必要とする人の所へ、時間を泳ぐ。翼を持つ人の所へ行く、未来の道標。夜を気高く歩く彼、僕は彼を知っている。遠い昔から、心を泳いできた。心は海、僕は海の中にいる。そして僕の故郷は、卒業にある。彼は今も舞台に立っている、僕は彼に呼ばれる。僕らが出会うとき、それは全く異なるものへと変わる。そう、それは誰にでもなれる。僕らは大航海をする、いわゆる船。

 僕は夜の中を、大きな水飛沫を飛ばしながらごぉうと進む。時折魚が口に入ってくるから、ついでに潮を噴いて空へ飛ばしてあげる。そうしてあげるとたまに、いいことがある。僕が泳ぐと星座が変わる、月が近付いてくる。山が膨れる、風が吹く。家々が揺れて、人間は地震だと思うんだろうな。まるで、絵の具をぶちまけたように。

 

(今日はここまでです、煙草とエナドリ早くして下さい。5月12日)

(5月13日 再会)

 

 彼は設計図を広げて、なにか思案に耽るような顔をする。そうしてしばらく夜の真ん中に、ぽつんと立ち尽くしていると、ふいに顔を上げる。どこからともなく、君の声が聞こえた気がした。あるはずばない.....いるはずがない、彼はそう思う。君はとっくに朝日を零す列車に揺られて、iHARBORへ行ってしまっただろう。iHARBOR、君が行く理想郷の名前、今はそれだけしか分からない。夜を裂く音が、聴こえる。どこか遠くで上がる、花火の音を聴くように。そして人々は彼に近付いてくるように、喧騒が暗闇の中に発生する。その刹那で彼は水浸しになった、どざぶぅーんと設計図から無数の小魚達と大きな鯨が飛び出てきたのである。

 

場面が変わる。

 

 そこは夜の海になった、流れる水は、即ち時間。海の中で自動販売機の灯りが地底を照らす、そこで飴色の水を飲む君の姿。鯨は大きな口をあんぐりと動かして、彼にこう述べる。「新しい世界へ飛び込む時がきた、君は潜水士」そうだ、彼は潜水士、深い海へ潜ることができる潜水士。人間とは可能性と不確定要素分、二つを持つ。彼は君のいる深い海へ潜る、人魚が見ている。だけど大丈夫、彼には鯨がいる。月の狭間の駅は、そこにある。

 

(今日はここまでしかできません、今日も一日お疲れ様でした。感想やスター待ってます。 5月13日)

(5月14日 再会)

 

 そして彼は深い海の底へ、君が待つ所へと潜る。人魚がやってくる、彼は人魚が好きだ、僕には分かる。色の白い、どこか影のある人魚。瞳の奥に影を見る、彼等はきっと心を知る仲だった。今はどうか、僕にも分からない。手を引かれる、そこに君はいるのか。鯨が見ている、小魚が一斉にこちらを見る。それは少し不気味で、何故だか不安になる。すると人魚がこう述べる「私は過去と今、私は女、私は白。あなたはなに?」、彼は戸惑う。「僕は過去、未来は知らない。僕は夢の中なのかも知れない」一瞬、その場の命ある者、全ての視線を彼は感じる。それはほんの一瞬だったが、彼には充分過ぎた。彼は視線を逸らし、君の元へ泳ぐ。泳ぎ方は知らない、そこに意思があるのならば自ずと進むべき。君は相変わらず飴色の水を飲む、徐々に君の小さな背中から、音色の翼が現れる。.....なにか、誰かが弾いているのだろうか、ピアノの音がする。君は翼を控えめに羽ばたかせた、君は海から消えたんだ、月の泡とともに。

 

 私は駅で列車待つ、ここがどこなのかは、とうに知れている。月の狭間の駅、ここから新世界へと旅立てる。あなたはこの駅を知っている?あなたにもいつか、この駅に立つ時がくると思う。いえ、それは誰にだって訪れるもの。悲しみと痛みと、自分を背負う若者達なら。地図を広げて待っていれば必ず訪れる、風を吹かす者達よ。私は奏でる、私の音を、私の楽譜を。それは音符となって私の前へ、ふわりと浮かぶ。あぁ、それは記憶と思い出。それらは確かに音を奏でる、それでも私は駅に立つ。朝日を零す列車に乗って、翼を持つ人に会いに行く。それは「新世界」、私は旅立つ、さようなら。全ての私、全ての麗しき想いで達、全ての小魚達。私は涙は零さない、私は涙は零さない、私は、さようなら。今、世界は変わろうとしている。

 

(今日はここまでにします、いつも短くてごめんなさい。5月14日)

※ 次回の題名は「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと王者の咆哮」になります。

(5月16日 再会)

 

 君は消えた、海の中から忽然と。鳥が空へ羽ばたくように、後に残るのは飴色の翼の欠片だけ。月の泡からぷくっと音がする、これは月の音。「駅とはなんだ。」彼は悩む、そうして海の底に辿り着く。そこは心の底、闇の中でぽつんと光る自動販売機。100円玉で買える温もり、彼は知っているか、この歌を。足元で翼の欠片がふわりとまう、彼はその翼を手に取り、辺りを見回す。そこはまさに夜の海、静寂が支配する空間に、自動販売機が動く音だけが響いている。所々に小さい石がある、その奥に広がるのは深い青と、どこまでも広がる星の砂。余りにも静かすぎる、鯨と人魚はどこへ行ってしまったのだろう、自動販売機が照らす砂の上に、一匹の赤いヒトデがいる。君が飲んでいた飴色の水はここで買えるようだ、見るとラムネ以外にはなにも売っていない。ボタンを押す、がこんっとともに出てきたラムネの瓶。中にはビー玉と飴色の水が入っている、蜂蜜色にぼんやりと輝く。ビー玉を覗くと、小さな銀河系が見える。「iHARBOR(アイ ハーバー)だ。」彼はぎょっとして、後ろを振り向くと僕がいる、僕は鯨、朝までを泳ぐ鯨。彼が持つ、翼の欠片に呼応するようにして、ビー玉の中の宇宙が変わる。そこに映し出されるのは月へ羽ばたく君の姿と、見知らぬ誰か。その誰かと彼の視線が交わる、誰かはなにかを叫んだようだった。すると少し間を空けて、うぉおおおおおおという咆哮が海の底へ届く。一瞬、海が大きく鼓動したように波を打つ。揺れる心の底で彼は僕の声を聴く、「波を掴め」と。

 

場面は戻る。

 

 「波を掴め」彼がはっとして設計図から顔を上げると、人魚が立っている。正しくは大人の女性だ、整った顔立ち、髪の毛の色は深い青で、肌は白い。すらりと伸びた手にはラムネの瓶と翼の欠片を持っている。夜の街で、彼と彼女は見つめ合う。

「あなたの思い人は、この瓶の中にいるわ」

そう述べると彼女はラムネの瓶を差し出す、彼はそれを手に取る。

「君は、iHARBORへの行き方を知っているのか」

彼がそう尋ねると、彼女は翼の欠片をひらひらと漂わせて遊び出す。

「その飴色の水は新しい世界への通行券、そのビー玉はコスモスへと繋がる。飴色の水を飲んだ時、あなたは月の狭間の駅へ行ける。あなたが過去、現在、未来の波を掴んだ時、世界は変わる

彼女はそれだけ言うと、足元でうろうろしていた赤いヒトデと会話を始めてしまった。

彼は少し戸惑ったが、ラムネの蓋を開け、ぼんやりと輝く水を飲む。

喉を鳴らす音に、ビー玉の中の世界が揺れる。

 

酔いが回ったようにグラつく視界の端で捉えたのは、宇宙船のような気がする。

 

(今日はここでお終い。5月16日)

(5月18日 再会)

 

 その宇宙船はとても巨大で、所々に隕石が衝突したような焼け焦げた後がある。先端は飛行機のようなコックピットになっていて、操縦士が一人。彼が目を覚ましたのは巨大な宇宙船の中にある、「月の狭間の駅」だった。彼は巨人が顔を覗かせるような、大きな窓から見える外を凝視していた。窓の外は彼が「潜水士」となって泳いでた、「心の底の海」だった、自動販売機の灯りが見えた。何億、何十億、何千億年前から銀河系をただよい、宇宙の外側まで見てきたであろうその宇宙船が、今度は夜の海の底を進んでいるのである。彼は前をみる、微動だにしない操縦士がいる。水の中を進む、独特の音がする。恐る恐る顔を覗いて見ると、まるで時が止まったかのような、先程までの人魚が操縦桿を握っていた。

 

 そろそろ彼は月の狭間の駅に入った頃だろうか、君が一体誰とiHARBORに行ったのかは僕も知らない。僕ができることは、ただ彼に声を伝え、彼が落としていった心の欠片を拾い集め、再び彼等に届けることだけ。僕は彼の味方でなくちゃならない、これはこの先も変わらない。君には遂に翼が生まれてしまったか、新しい世界の空を、僕たちも飛びたい。風に乗って、ふわりと浮かぶ感覚を、彼にも教えてあげたい。その空に、不純物はない。本当に大切な人、本当に大事な物、そういうのには翼を与えて、誰も知らない世界へと飛ばすんだ。この彼の心の欠片を届ける時、それが過去と今、そして未来と可能性が交差する時なんだ。

 

 どうやら彼は、ここが月の狭間の駅、そしてそれを含んでいるのがこの宇宙船。その宇宙船の名は、「サンタクロース」。駅には列車がくる、そこに待ち人がいるなれば、これは自然なこと。偶然ではなく、必然。列車というものは人を目的地へと届ける乗り物、これも必然。では彼の場合、駅に宇宙船がきたのである。これは偶然と、人間が持つ不確定要素分の内の一つ。これから彼は駅を出て、世界へ行くのである。

 ふいに前を見据えたままの人魚が口を開く、「リンドバーグは、宇宙の外側がどうなってるか、知ってる?」リンドバーグというのは彼の名前である。

 

(ここまで、鬼滅の刃面白いです。5月18日)

(5月21日 再会)

 

 「宇宙の外側.....」彼には全く想像ができない、宇宙ならまだしも外側など。

「宇宙の外側には、衝動があるの」彼女はそう述べると、じろっと彼を見た。

そこはなに一つない空間にたった一色、色があるの。その色は、人がこの世に生まれる衝動そのもの。宇宙の外側で、人は産まれているの。あなた達は私からすると、宇宙人に違いない」

彼は黙って彼女の話を聞く。

「その衝動の色を知る者が、この世にはいる。外側を理解し、意味を見付けた人がこの世にはいる」

彼の乗るサンタクロースが、ごくんと揺れた。

 

 私はその時、月に向かって宙を羽ばたいていた。漆黒の宇宙には無数の銀河系が見える、あの銀河系一つ一つに私がいると、チャールズに教えてもらった。私が駅で列車を待っていると、チャールズが迎えに来てくれた。星の翼を優しく羽ばたかせて、私たちは二人で彼が知らない世界へと飛ぶ。私が求めていた翼を持つ者、でもチャールズはたまに吠える。どうしてなのかは分からない、チャールズも私と同じように、鯨が怖いのかも知れない。鯨には、時間と空間を越える力があるから。

 

 宇宙船「サンタクロース」が揺れる、足元がおぼつかないほど。まるで海の海底からなにか巨大なものが出てくるよう。

「なんだ!?」彼は椅子にしがみつく、「ここは駅」人魚が言う。

駅には待ち人を届ける「なにか」が現れる、そしてこの宇宙船は夢を届ける。

「もうすぐ着くわ」

「.....どこに」

「地底の月」

 

(ここまでにします。起用転転転転転、、、。 次回はサブの題名を変えます。 5月21日)

(5月24日 再会)

 

 どすんと船内に音が響き揺れる、どどどどどっと海底を擦る音が聞こえる。凄まじい振動だ、立つことがままならない、どこかに不時着したようだ。どごんっと一回大きな音が響いた、それきり音はしなくなる。彼は顔を上げ窓から外を見ると、海底には砂埃が渦を巻いて、辺りを漂っている。人魚はゆらりと立ち上がると、彼の手を引き「降りて」とだけ述べた。

まるで古い屋敷の巨大な扉を開けるようにして、コックピットの上部が開いた。彼は驚く、そこは一言で言ってしまえば「月」に不時着していたのである。彼はもう一度船内に戻り、窓の外を確認する、先程までの砂埃が海底に漂っている、少し落ち着いてきたようだ。

「言葉が出ない?」人魚が傍らに立つ。

「ここは海でもあり、宇宙でもあるの。どちらにしても、ここは月」そう言うと人魚は、彼を外へ連れ出した。

「.....見て、あの銀河系一つ一つにあなたがいるの」

珍しい虫を見付けた子供のように指を差す、その横顔は確かに「人魚」を思わせる。

「どうして月に.....」

「あなたがiHARBORを求めたから」

「理想郷は月にあるのか、どこに」

「あそこは理想郷、なんて優しい所じゃないわ。時期に二人とも来るから」

「.....。」

彼が唖然と漆黒の宇宙を見ていると、地球の方面からなにか、翼をもつ者が二人飛んでくる。

「チャールズと、あなたのお嬢さんよ」

 

 私がそっと翼を羽ばたかせて降り立つと、月の粉が少し舞う。空中に漂う砂埃を見ると、確かにここは無重力なのだと思う。リンドバーグと目が合う、話すことは、なにもない。彼は私を泣かせたから。私も同じように、彼を泣かせたけど。ぐるりと辺りを見回すと、始めて人類が着陸したアポロ、残された星条旗が静かに残されている。人類の歴史は、沈黙とともにある。月は静か過ぎる、大きなものの存在を感じる。

「.....iHARBORは月の裏側にある、理想郷とは、いつも隠されているんだ」

チャールズはそう言うと、私に赤いヒトデを渡してきた。

「ヒトデ?...何故?」

「君とiHARBORに行く可能性もある、或いは君と彼(リンドバーグ)が行くこともありえる。過去と今、未来の可能性が交差する。でも、すべてを知る鯨は今、彼の心にいるからな。君と彼がそこへ行け。」

チャールズは「ここで人魚と待っている」と、それだけ言い残し、サンタクロースの中に閉じこもってしまった。

 

 彼もまた、同じように人魚から「翼の欠片」を受け取っていた。人魚は彼を見つめると、こう話した。

リンドバーグとお嬢さんが持つ『翼の欠片』と『赤いヒトデ』は、あなた達二人の心の欠片。いい?あなたはお嬢さんの欠片を持ち、お嬢さんはあなたの欠片を持っているの。iHARBORから帰る時に使えるの、それは乗車券、二人は忘れ物をしている。私はチャールズとサンタクロースで待っているから、あなた達二人の可能性次第では、私たちはここに戻って来てもいない。でもそれは、『死』や悲しむことではないの、交差しただけ、すべての事象と可能性が。」

 

こうして二人は、月に取り残される。iHARBORは、月の裏側にあるらしい。

 

(ここまで。5月24日)

扉の向こうには、何人の僕がいるのか。

・君は誰か。

 君は「何者」か、はっきり言えるだろうか。そういう映画があったのを思い出すし、きっと似たような小説も、世に山という程出回っているんだろう。君は自分が誰なのか、何者なのか考えることはあるか。おおかた、こんなことは考えなくていい。しかし僕はたまに思案する、自分が誰なのかを。別に記憶喪失というわけではない、記憶ならしっかりとある。ただ「何者」なのか、それが分からない。

 

 文章を作る僕、調べ物をする私、働く僕、哲学的な私、Blogを書く僕.....何人の僕がいて、そしてどれにもなれない。果たして「僕」を定義するものなどあるのだろうか、あるとすれば、誰かが教えてくれるのだとしたら、それは嘘に聞こえる気がしないか。僕にとってはまやかしに過ぎない、正し煙草だけは裏切らない。もしも今、目の前に真実を写し出す鏡があるとしよう。僕はその鏡に問い掛ける、「僕は何者なのか」問い掛ける。

 

 そこに、なにかが写し出されなかった時、それが「真実」だとしたら、僕はそっとこの世から抜け落ちる気がしている。世の中からドロップアウトする、それが真実なら。僕は何者か、何人の僕がいるのか。誰も知らない、答えはない。どこかで聞いた入れ知恵だが、物事に「答え」や「意味」を付与するのは、人間だけらしい。僕は人間じゃないかも知れない。