ham-chanz’blog

明日は明日の風が吹く。

雨音が止む前に。

 

大通りから脇道に抜けると、喧騒は遠のいた。

人混みを離れ、森の香りが漂ってくる小道を進む。

雨上がり、雨粒が滴る小人の道を抜けると、妖精が訪れるような珈琲店がある。

 

木々に囲まれたその店は、人間界を抜け、どこか異国へ通ずるような佇まいである。

ちりん。と控えめな音を出す戸を開けると、珈琲の心地良い香りが鼻をついた。

僕は窓辺の二人がけの席に座り、胸を撫で下ろす。

 

店内には古めかしくも、どこかお洒落なイスとテーブルがあり、どれも年期が入っている。

壁に掛けられた古時計が、頑張りながら時を刻んでいる。

橙色の明かりが眠気を誘う、雨が降ってきたのか、ざぁっという雨音が店内に響く。

 

.....ぼーん、ぼーん、ぼーんという古時計の音で目が覚めた。

いつの間にか眠ってしまっていたようである、テーブルには貴族が宝物にしていそうなティーカップに入った珈琲と、ショコラケーキが置かれていた。

 

精算台の奥、人がいそうな気配がある。

角砂糖とミルクを入れた珈琲を啜ると、頭が正しく覚醒する。

ショコラケーキを小さく切って口に頬張ると、ただただ甘い、それだけが舌の上で溶ける。

 

足下にこつん、となにかが当たる感覚がして下を覗くと、どうやらこれは足踏みミシンであったようである。

足下にある板を踏むと、左側ある輪っかが回転する仕組みになっている。

僕は試しにその板を踏んでみる、するとぽんっと目の前にあるはずの珈琲とケーキが姿を消して、人参のスープとタコライスに変わっている。

 

※ 後書き

また続きを書きます、最近更新が滞っておりすみません。

題名のない文章

 

ふとした時に考える、私たちは何故、感情を感じるのか。

楽しいと笑い、悲しいと泣き、怒られると落ち込む。

それがすべてではなくて、人によって捉え方は異なる。

 

なにかに共感し、同情し、共有する。

 

大学生の時、「人間は独り」と語っていた教授の言葉を思い出す。

誰かがいるからこそ、そしてその誰かが、あなたと違うからこそ

私たちは一人、二人、三人と仲間を増やしていく。

 

涙はどこから来るのか、心はどこにあるのか、痛む心はなにか。

なぜ誰にも分からないのか、いつか解き明かされる日が来るのか。

同じ心は一つとして存在しない、私は今日も分からないまま、社会に流される。

 

上手くできていると思う。

大雲海

 

霧の掛かった峠を抜けると、そこには見たこともない大雲海が広がっていた。

 

山頂から見下ろす眼下には、雲海が広がっている、時刻は24時を少し回った所。

なみなみとした雲が月明かりに照らされて、ゆっくりと流れて行く。

私はそれを見て、綿あめを嬉しそうに頬張る子供を思い浮かべた。

 

路肩の茂った木々から、今にも人外の類いが出てきそうな黒々とした山道を抜けると、そこには空の秘密が隠されている。

遥か地平線まで続く大雲海、それを見た時、かつて天使だった彼女は雲に飛び乗って流れて行った。

ここにはなにもない、下界のような地獄とは違い、欲望も快楽も差別も存在しない。

 

この地獄を抜け出すことができる、秘密の抜け穴、それは私の中にある。

みな私の中を通ってここへ辿り着く、ジョン・F・ケネディBEATLES伊藤博文も。

ここはあの世、などという優しい世界ではなくて、自分が辿り着きたい場所に行く。

 

ここは出発点にすぎない。

船を送り出す港のような、飛行機が飛び立つ空港のような、自宅の玄関を開ける瞬間のようなもの。

漂い続けるこの世界。

機動隊とカップラーメン

 

「機動隊」と「カップラーメン」と「人情」

 

どうだろう、この三つのワードを書いただけで、そこには「ドラマ」があると思わないか。

 

今回は読者の想像力に委ねよう。

 

※ 後書き

ネタがないだけです、絞り切った残りカスみたいな文章です、許して下さい。

 

 

夏、揺れる蜃気楼と線路の人影

 

 暑いな、実に暑くはないか。これから今日よりも、一層暑くなると考えると気が滅入る。「夏」という季節には、様々な言葉が当てはめられる。青春、恋人、花火、列車、入道雲.....四季があるとは言えども、やはり人生を象徴するようなものが紛れる季節である。

 

 「蜃気楼」を知っているか、暑い時期にアスファルトの路面上で揺れる熱気のことである。あれを見ると、いよいよ夏が近付いて来たと肌で感じる。

 

 読者が少年少女だった頃、線路上に敷かれたレールを「人生」に見立て、あらゆることを思案した時期はなかっただろうか。それを思春期とも呼ぶだろう、あの頃に持っていた疑問、哲学、感情はどこへ行った。まだ、持っているか。

 

 今となっては雲散したが、あの頃の自分はきっと今より遥かになにかを悟っていた気がする。そしてそういった疑問の答えを、今の自分が持ち合わせているとはとても、思えない。あのレールの先に立つ人影は誰だったのか、今の自分か、過去の自分か、未来の自分か、或いは他人か。

 

 季節の変わり目と同じように、風に揺られ、風に乗り消えて行く。頬を伝わる、じっとりとした汗を思い出す。人生の熱気を感じるか、蜃気楼の中から戻っては来られるか、夏には終わりがある。

こちら旅人、異常なし。

 

それはまるで、飴色の角砂糖のよう、触れるととろりと溶けてしまう。

水が張られた田んぼの中を、静かに走る電車、車窓から朝日と同じ色が零れる。

三両編成で、如何にも秘境を走っていそう、秘密の街へと辿り着く。

 

夜の香りが立ち込める、すぅーっとする優しい煙草のよう、月明かりに照らされる。

車窓から零れた朝日は、雨が降るようにぽちゃっと落ちる、そこに蛍が集まる。

電車の音が遠くなる、後に残されたのは私と、祭りの後の静けさだけ。

 

あの電車の中で揺られていたのは誰、車窓からぼうっと世界を覗いていたのは誰。

今あなたが思い浮かべたその人が、飴色の電車に揺られている。

目的地もなく、ただ時の流れに身を委ねて。

 

こちら旅人、異常無し。

伝説のPajamas

 

最近は自宅で過ごす機会が多いと思う。

君は家にいる時、パジャマか部屋着を着るだろう。スーツのようにびしっとせず、仕事着のようにしっかりせず、私服のように見栄えを気にする必要がない。

 

.....伝説のパジャマを知っているか。

なにやらそれを着ると、今まで経験したことがない高揚感に包まれ、安らぎと落ち着きをくれるアイテムらしい。

 

それを着れば、悩み、苦しみ、辛さ、これらから解放される。

極上の睡眠が約束されるのである、或いは夢から覚めないこともできる。すべてが自分の思い通りになり、なにも気にする必要はない。

 

そんな部屋着が欲しいとは思わないか、それはこの世界のどこかある。

私も場所は知らない、ただどこかにある。

見付けたら是非、私に連絡をくれ。

 

※ 後書き

最近は仕事が嫌々すぎて、文章にもキレがでません。

市街地

・怪談になります

その日は友人と遊んだ帰り道だった。

 

すっかり陽が暮れて、辺りはもう暗い。けれど車内にエアコンを効かせていないと、まだ蒸し暑い。私は助手席で、夜に沈んだ街を眺めている。山に囲まれた街、山と山との間にこの街はある。不気味に窪んだその街、山の麓に点在する鳥居は、街を囲むようにして作られていると最近聞く。

 

私はこの街から車で四十五分ほどの所に住んでいるから、ここがどのような街なのかは余り分からない。ただ、通る度に異様に静かで、窮屈な印象は受ける。家から零れる明かりは少なくて、街灯の明かりの方が強い。

 

ここを通る時、いつも私を楽しませてくれる友人の口数が減る。気のせいかも知れないけれど、特段気にするようなことでもなく、私も気にしないようにしていた。もうすぐトンネルに入る、このトンネルを抜ければ、この街を出れる。

 

「トンネルを出たら、コンビニに寄っていい?」

そういった友人は、後ろを気にしているようだった。

「...うん」

「煙草吸いたくて」

「まだ吸ってたの?」

私は一ヶ月前に、辞めたと聞いていたから。

「あなたの前でしか吸わない」

私は少しぎょっとした、たまにこういうことをさりげなく言う。

 

そうしてぼんやりと市街地を眺めていると、ある一つの街灯に眼を取られた。

やけに煌々と明るくて、蛾が回りを飛んでいるようで。その街灯の下に、人の姿をしたなにかが、こちらを瞬きもせずにじっと見つめていた。思わず私は眼を逸らす、見てはいけないものを見たのだと肌で感じたから、一瞬のできごとだった。

 

 

.....暫くして、道沿いのコンビニへ立ち寄り、私はさっき見たものの話しを彼女に話した。終始黙って聞いていた、話し終えると煙草を深く吐いて、私を無言で見つめてくる。

 

私の背後で、ブラックライトに焼かれて死ぬ蛾の音がした。

 

 

 

※ 後書き

オチは適当に書きました、リクエストとかあればそのテーマで書きます、あれば。

 

かつて海に沈んだ空

 

雨も嫌われたものだと思う、降りたくて降っているわけじゃないだろう。

あの透き通った空は、絵本の中に閉じ込められている。

隠された晴れ間の空、誰かがその本を見付けた時、頁を開いた時に空は晴れる。

 

かつて海に沈んだ船のように、横たわる空。

そこに糸を垂らして、晴れ間を連れて来る。

嫌がるのをなだめて「いないと困るんだ」と励まして、連れて来る。

 

この世界で一番「空」を大切にしている人が、晴れた空を隠している。

「本当に大切なものは、誰にも分からない所に置いておくんだ」

そういって、替わりに梅雨を連れて来る。

 

申し訳なさそうに虹が顔を見せる、僕らの顔が晴れる。

「お邪魔しました」といって消える虹、僕らの顔が曇る。

僕らは余りにも単純で、流されやすい。

 

流行の風邪にやられた僕たち。