鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

エッセイ

指揮者がいないオーケストラ

季節外れの暑さに、春は砂糖菓子のように溶けていく。 もし言葉に手足が生えていたら、重力に逆らって、心まで届くだろう。 春の終わりか、夏の始まりか、知らせるように鳴くカエルの合唱が届く。 景色を、光の線のような残像で捉える。 果てしない道を見る…

a.

沈んで来た所が丁度、海の底だった。 誰かを呼ぶように泣く子供の泣き声が、まず耳に届く。 次に、足元で秒針を刻む、昔からある時計が目に付いた。 静寂が仁王立ちをし、暗雲の向こうから泣き声は聞こえる。 まるで四方を壁に囲まれているように、息苦しい…

誰も知らない扉の開け方。

缶珈琲を飲み終わった後、煙草を吸い終わった後、美しいことを見た後 瞳の奥に小さな灯火を携えて、一歩を踏み出す時 その一瞬だけ、自分を好きになれる。 ○か✕か、分からないまま歩み進めてきた今 私の目の前にはようやく、大きな観測所が現れた 未来と過去…

履き慣れていない靴で、走る音。

私は今、耳を澄まして聞こえることを、空を見上げて思うことを。 内側から迫り上がる声を、外側へ響かせている。 なにもないな、なんて、顔色を伺うように空を見て。 私の中に否応なく侵入してくる物事に、定義と意味をつけて。 いるものと、いらないものに…

僕、パンク・ロックを聴いた

スーパーで花火を買った後、汗を拭いながら駐車場へ歩く時だった。 「僕、パンク・ロックが好きだ」 「中途ハンパな気持ちじゃなくて」 「本当に心から好きなんだ」 喧騒をぶち壊して爆音が響く、車から響いているようだが姿は見えなかった。 あの一瞬が、そ…

題名のない文章

ふとした時に考える、私たちは何故、感情を感じるのか。 楽しいと笑い、悲しいと泣き、怒られると落ち込む。 それがすべてではなくて、人によって捉え方は異なる。 なにかに共感し、同情し、共有する。 大学生の時、「人間は独り」と語っていた教授の言葉を…

夏、揺れる蜃気楼と線路の人影

暑いな、実に暑くはないか。これから今日よりも、一層暑くなると考えると気が滅入る。「夏」という季節には、様々な言葉が当てはめられる。青春、恋人、花火、列車、入道雲.....四季があるとは言えども、やはり人生を象徴するようなものが紛れる季節である。…

缶珈琲「BOSS」のような文章

世の中には様々な仕事がある、ここには書き切れないほど多く。 諸君、今日もお仕事お疲れ様である。 「褒める」ということが、なくなりつつあると思っている。 私たちは一体、何故ここまでして、必死に働いているのだろうな。 誰のために、誰かのために、な…

扉の向こうには、何人の僕がいるのか。

・君は誰か。 君は「何者」か、はっきり言えるだろうか。そういう映画があったのを思い出すし、きっと似たような小説も、世に山という程出回っているんだろう。君は自分が誰なのか、何者なのか考えることはあるか。おおかた、こんなことは考えなくていい。し…

鬼滅の刃と全集中の呼吸の、エナジードリンク。

・全集中の呼吸とはエナジードリンクのこと。 昨今、社会現象を巻き起こしている「鬼滅の刃」、なにやらこの度、最終回を迎えたらしい。最終回を迎えた時期に、筆者はこれにハマった。アニメーションから入り、まだ全話見切れていない新参者である。 「全集…

それは現実的で曖昧的で、どこか天狗のお面。

・今日は違うことを作ります。「実態が消えて、戻る。」 実物の天狗を見たことはないけど、僕の寝室にはいつも天狗がいる。本物かどうかは知らないし、どうでもいい。空間に浮かぶんだ、勝手に浮かんでおきながら、彼等は困った顔をする。怒っているのかも知…

青ざめた瞳の奥、さらにその奥。

・奥の奥の奥 「字は人を表す」と、一度は聞いたことがあるだろう。 勿論、文字を書くにあたり字が綺麗なことはいい。見る人が見れば、その人がどんな人間なのかを想像できる人がいるのかも知れない。あくまでも僕の場合、字ではなく「目」にその人の人間模…

寝る前に羊を数えるというよりは、変態を数えることについて。

・世の変態について 一言に「変態」とまとめてしまっても、数ある変態がいる。自覚のない変態、変態的な変態、本物の変態。これらを総じて変態と言うなれば、世の中は既に変態で溢れ返っている。国家は停滞し、警察は腐敗し、常識は崩壊する。もしもこの国に…

青木ヶ原樹海の木々のざわめきと、沈黙。

・僕の感覚 夕陽に赤く染められた富士山、その麓に広がる広大な自然。人は自分の中にある、本質的なものを求めている。無言の木々、頬をかする風、持ち主のいないゴミ。樹海には「魔物」が潜んでいると、感じたことはないか。 沈黙が支配する、あまりにも美…