鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

それは現実的で曖昧的で、どこか天狗のお面。

・今日は違うことを作ります。「実態が消えて、戻る。」

 実物の天狗を見たことはないけど、僕の寝室にはいつも天狗がいる。本物かどうかは知らないし、どうでもいい。空間に浮かぶんだ、勝手に浮かんでおきながら、彼等は困った顔をする。怒っているのかも知れないし、元からそういう顔なのかも知れない。時々だけど、天狗のまん丸の眼が、僕を見る。じろりと見られると、僕はなにか悪いことをしている気分になる。こういう気分になるのは大人だけだから、僕は子供になる。

 

 そう思うと、どんどん幼くなってくる。天狗に睨まれるのは大人だけ、子供にはどうしているのだろう。翼に乗せて、空を駆けているのかも知れない。天狗はいつも困った顔をする、まるで人間じゃないか。大人はいつも困っている、困っていない人を見たことがない。僕も早く大人になりたい、大人になったら困った顔をして、天狗になる。そしたら空が飛べる、星まで行ける。好きな子の所に、いつでも行ける。車や電車になんか乗らなくていい、大人になったら空を飛ぶんだ。そして大人の女性と付き合って、結婚するのかな。誰がその未来を知っている、先生は答えを言わない。いつも諭してくるだけ、大人はそうだと思ってる。たまに優しい時がある、お金にうるさい。僕は未来を見る、未来には誰がいる。今、僕の目の前には天狗がいる。天狗さん教えて下さい、大人になった僕の人生を。あなただけが僕を見ているし、僕を知っている。

 

そろそろ大人に帰ることにする。