鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

履き慣れていない靴で、走る音。

私は今、耳を澄まして聞こえることを、空を見上げて思うことを。

内側から迫り上がる声を、外側へ響かせている。

なにもないな、なんて、顔色を伺うように空を見て。

 

私の中に否応なく侵入してくる物事に、定義と意味をつけて。

いるものと、いらないものに分ける作業が鬱陶しい。

これを放っておくと、よくない。

 

溜め息を吐くと、目に見えて足下へ転がる。

言葉の繋がりを見るように、自分の繋ぎ目を見て、ほつれている糸。

汚くて、汚れていることばかりが、へばり付くように影を成す。

 

窓際を覗くと、季節は新緑になっていた。

カーテンが靡くのを、目の端で捉えている。

小川のせせらぎと、小鳥のさえずりを耳にしながら、今日の晩御飯のことを考える。

 

心の波がすぅと溶けて行く、履き慣れていない靴で走る音。

私に向かって来る数多の足音が、ただ通り過ぎて行くのを見ていた夕暮れ。

飛行機が飛ぶのを見て、意識が雲に乗る、重力から解放されて青へ羽ばたける

 

そこで腕組みをして思案する、そしてもう一人の私がいることに気付く。

砂時計の砂が音を立てず、静かに静寂の山に落ちて行くように。

必ず落ち切る砂を見て、どこか切ない気になれば、心に色が付く。

 

虚空を見つめて、私の横顔を覗く私が、すぐ隣にいる。

どうでもいいことが頭の中を掻き回す、白と黒とは言い切れない色を。

万物の物が、或いは偽物と本物のフリをしていることに、具合が悪くなる。

 

嗚呼、大人になってから、さよならをする。