人参のスープとタコライス、どちらもとても美味しそう。
スープからはほのかに湯気が立ち昇り、タコライスからは焼きチーズの香りがする。
僕はこの二品を頂くことにした、窓の外ではまだ雨が降っているよう。
静かに雨音を耳にしながら食べ進めていると、精算台の奥から若い女性が出てきた。
黒髪を後ろで束ね、Tシャツから覗く肌は陶器のように色白く、赤いエプロンが印象的。
こつこつこつ、と僕の所に持ってきたのはレシートと、硝子で創られたたんぽぽだった。
とても繊細に創られている、名のある職人が手を尽くしたのだろう。
僕はスープとタコライスを平らげて思案する。
どうしたらこの硝子のたんぽぽを、生花に変化させることができるのかと。
腕を組み天井を見上げながら暫く考え込んだ挙げ句、僕はなんとなく足下の板を踏んでみた。
すると食べ終わった皿が片付き、出てきたのは小さな水溜まり。
雨上がり後の太陽を思い浮かべた、そこに硝子のたんぽぽを浸けてみる。
みるみる硝子が涙のように零れ落ちて、生き物としての輪郭を持ち始めた。
零れ落ちた硝子は水溜まりの中に氷のように溶けて行く、すくって口にしてみると塩の味がする。
すべての硝子が零れ落ちたたんぽぽは、やがてそこに根を下ろした。
窓から西日が射し込む、雨は止んでいるようだった。
僕はレシートを持ち席を立つ、精算台で会計を済ませていると、奥から僕が出てきた。
もう一人の僕は彼女と同じ赤いエプロンをして、ここで働いているようだ。
僕は役目を追えたのだ。
※ 後書き
展開や結末をどうしようか、そこそこ悩みました。
悩んだ結果、訳の分からないことになってしまいました。