鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと世界の設計図。(3)

・起きている時

 昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。

彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者たち。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。

 

 立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足で、駅へと向かう。

 

 君は結局強くて、しっかりしていて、彼より頭がいい時がある。そこにいては鯨に食べられてしまうだろう、鳴き声がこの街に響く。彼の耳にはきっと違う声が聞こえていたはず、それは現実的で曖昧的でどこか夢の国。そこは現実と夢の狭間、そこで彼等は優しい風を待つ。頬を温めるような、小さく光る風。彼は歩く、足があるから。理由はそうだったように思う、夜は深まる。

 

(2020年5月10日)

(5月11日 再会)

 

 世界は昼の中にはない、夜の中にこそ新しい世界がある。まだ見たことがない、誰も知らない新しい世界。彼はその世界を、まだ知らない。君は夜に戻ることをやめた、「私はお日様が好き」と言って立ち上がる。僕は今、それを見ている。時計に意味はない。

 

 私は立ち上がる、海に沈めた欠片を置いて。そして知らない、まだ見ぬ世界。誰も知らない未来。私はそこに行く、どこか遠くの知らない駅から。私の世界を変えることは、誰にもさせない。私はそういう頑固な所がある、それは知っている。誰にも邪魔されたくない、夜は一人にして欲しいの。女の子は皆、動物が好き。私も鯨は好きだけど、私のことをどう思っているのかは知らない。動物と会話がしたい、私が話したいのは彼じゃなくて、新しい世界に翼がある人。彼の翼は知っている、その色と、空への飛び方も。だから知らないことを知る、これは興味本位。分かって欲しい、私も心の痛みは知っている。同じ痛みはない、誰にも、皆違う。駅には私一人、きっと彼は来るでしょう。夜の中から、鯨とともに。

 

 僕は大きな物を持っている、大きな人を待っている。見えるだろうか、伝わるだろうか、全ての僕たちへ。そして僕の世界たち、今僕はここにいる。大きな地図を広げて、風を待っている若者たち。僕が「今」を知っている、その先の未来と、出会いを。戻らないことも世の中にはある、未来の大きな人に託す。過去と、今と、未来が交差する。僕はそこから産まれた鯨、大きな、大きなヒーローでもあり、僕は悲しみそのもの。時計の針が戻る、秒針の音が鳴る。人を呼ぶ、虹を見る、夢を伝える。僕は全て、そこからの未来。君たちは知らない、僕が新しい世界。僕は夜から来た、コンパスはいらない。心は道標になる、だけど優しさを知る者しか分からない。音色とともに設計図を作っていた僕は、言葉となる。

 

(今日はここまで! 5月11日)

(5月12日 再会)

 

 彼は駅が現れるのを待っていた、君が乗った列車は分からない。それでも彼は待っていた、自分に翼があることを信じて。そしてその翼で、天高く、あの底知れない海の空へ。天と地は逆になる、上が下で、下が上。或いは同じこと、そこから産まれる「なにか」。彼の心の中を少し知る、それは写真のよう。思い出が一つ、西日に照らされた木の下で、若者たちは瞳の奥を知る。それがその時の、一つの真実で世界、飛べない世界。蜃気楼のように思わせる君の瞳、視線は未来を見る。揺れる、君の髪。その後ろに忽然と佇む、沈黙の影。歌が聴こえる、あの時の君の顔は、輝かないダイヤモンドのようだった。

 ここを見る者よ、君のポケットに設計図は入っているか。たった一つの彼の武器、傷付くことを知らずに勇気をくれる、それが、世界の設計図。彼がここまで作り上げてきた全て、そして君と僕のこれから。全ては言葉にできる、言葉は文章になる。設計図を作る、完成する時があるのだろうか。世界には謎が必要、謎がないと地球儀を回せない。大きな謎が解ける時は、命が芽吹く時か、散る時。彼は懐中電灯を取り出して、冒険家のような目で設計図を見る。これから冒険が始まる、これは序章に過ぎない。宇宙船を作ることと、世界の構造は同じ。設計図に綴る、僕の言葉。

 

 僕は呼ばれる、必要とする人の所へ、時間を泳ぐ。翼を持つ人の所へ行く、未来の道標。夜を気高く歩く彼、僕は彼を知っている。遠い昔から、心を泳いできた。心は海、僕は海の中にいる。そして僕の故郷は、卒業にある。彼は今も舞台に立っている、僕は彼に呼ばれる。僕らが出会うとき、それは全く異なるものへと変わる。そう、それは誰にでもなれる。僕らは大航海をする、いわゆる船。

 僕は夜の中を、大きな水飛沫を飛ばしながらごぉうと進む。時折魚が口に入ってくるから、ついでに潮を噴いて空へ飛ばしてあげる。そうしてあげるとたまに、いいことがある。僕が泳ぐと星座が変わる、月が近付いてくる。山が膨れる、風が吹く。家々が揺れて、人間は地震だと思うんだろうな。まるで、絵の具をぶちまけたように。

 

(今日はここまでです、煙草とエナドリ早くして下さい。5月12日)

(5月13日 再会)

 

 彼は設計図を広げて、なにか思案に耽るような顔をする。そうしてしばらく夜の真ん中に、ぽつんと立ち尽くしていると、ふいに顔を上げる。どこからともなく、君の声が聞こえた気がした。あるはずばない.....いるはずがない、彼はそう思う。君はとっくに朝日を零す列車に揺られて、iHARBORへ行ってしまっただろう。iHARBOR、君が行く理想郷の名前、今はそれだけしか分からない。夜を裂く音が、聴こえる。どこか遠くで上がる、花火の音を聴くように。そして人々は彼に近付いてくるように、喧騒が暗闇の中に発生する。その刹那で彼は水浸しになった、どざぶぅーんと設計図から無数の小魚達と大きな鯨が飛び出てきたのである。

 

場面が変わる。

 

 そこは夜の海になった、流れる水は、即ち時間。海の中で自動販売機の灯りが地底を照らす、そこで飴色の水を飲む君の姿。鯨は大きな口をあんぐりと動かして、彼にこう述べる。「新しい世界へ飛び込む時がきた、君は潜水士」そうだ、彼は潜水士、深い海へ潜ることができる潜水士。人間とは可能性と不確定要素分、二つを持つ。彼は君のいる深い海へ潜る、人魚が見ている。だけど大丈夫、彼には鯨がいる。月の狭間の駅は、そこにある。

 

(今日はここまでしかできません、今日も一日お疲れ様でした。感想やスター待ってます。 5月13日)

(5月14日 再会)

 

そして彼は深い海の底へ、君が待つ所へと潜る。人魚がやってくる、彼は人魚が好きだ、僕には分かる。色の白い、どこか影のある人魚。瞳の奥に影を見る、彼等はきっと心を知る仲だった。今はどうか、僕にも分からない。手を引かれる、そこに君はいるのか。鯨が見ている、小魚が一斉にこちらを見る。それは少し不気味で、何故だか不安になる。すると人魚がこう述べる「私は過去と今、私は女、私は白。あなたはなに?」、彼は戸惑う。「僕は過去、未来は知らない。僕は夢の中なのかも知れない」一瞬、その場の命ある者、全ての視線を彼は感じる。それはほんの一瞬だったが、彼には充分過ぎた。彼は視線を逸らし、君の元へ泳ぐ。泳ぎ方は知らない、そこに意思があるのならば自ずと進むべき。君は相変わらず飴色の水を飲む、徐々に君の小さな背中から、音色の翼が現れる。.....なにか、誰かが弾いているのだろうか、ピアノの音がする。君は翼を控えめに羽ばたかせた、君は海から消えたんだ、月の泡とともに。

 

 私は駅で列車待つ、ここがどこなのかは、とうに知れている。月の狭間の駅、ここから新世界へと旅立てる。あなたはこの駅を知っている?あなたにもいつか、この駅に立つ時がくると思う。いえ、それは誰にだって訪れるもの。悲しみと痛みと、自分を背負う若者達なら。地図を広げて待っていれば必ず訪れる、風を吹かす者達よ。私は奏でる、私の音を、私の楽譜を。それは音符をなって私の前へ、ふわりと浮かぶ。あぁ、それは記憶と思い出。それらは確かに音を奏でる、それでも私は駅に立つ。朝日を零す列車に乗って、翼を持つ人に会いに行く。それは「新世界」、私は旅立つ、さようなら。全ての私、全ての麗しき想いで達、全ての小魚達。私は涙は零さない、私は涙は零さない、私は、さようなら。今、世界は変わろうとしている。

 

(今日はここまでにします、いつも短くてごめんなさい。5月14日)

※ 次回の題名は「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと王者の咆哮」になります。