鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと世界の設計図。

・起きている時

 昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。

彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者たち。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。

 

 立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足で、駅へと向かう。

 

 君は結局強くて、しっかりしていて、彼より頭がいい時がある。そこにいては鯨に食べられてしまうだろう、鳴き声がこの街に響く。彼の耳にはきっと違う声が聞こえていたはず、それは現実的で曖昧的でどこか夢の国。そこは現実と夢の狭間、そこで彼等は優しい風を待つ。頬を温めるような、小さく光る風。彼は歩く、足があるから。理由はそうだったように思う、夜は深まる。

 

(2020年5月10日)

(5月11日 再会)

 

 世界は昼の中にはない、夜の中にこそ新しい世界がある。まだ見たことがない、誰も知らない新しい世界。彼はその世界を、まだ知らない。君は夜に戻ることをやめた、「私はお日様が好き」と言って立ち上がる。僕は今、それを見ている。時計に意味はない。

 

 私は立ち上がる、海に沈めた欠片を置いて。そして知らない、まだ見ぬ世界。誰も知らない未来。私はそこに行く、どこか遠くの知らない駅から。私の世界を変えることは、誰にもさせない。私はそういう頑固な所がある、それは知っている。誰にも邪魔されたくない、夜は一人にして欲しいの。女の子は皆、動物が好き。私も鯨は好きだけど、私のことをどう思っているのかは知らない。動物と会話がしたい、私が話したいのは彼じゃなくて、新しい世界に翼がある人。彼の翼は知っている、その色と、空への飛び方も。だから知らないことを知る、これは興味本位。分かって欲しい、私も心の痛みは知っている。同じ痛みはない、誰にも皆違う。駅には私一人、きっと彼は来るでしょう。夜の中から、鯨とともに。

 

 僕は大きな物を持っている、大きな人を待っている。見えるだろうか、伝わるだろうか、全ての僕たちへ。そして僕の世界たち、今僕はここにいる。大きな地図を広げて、風を待っている若者たち。僕が「今」を知っている、その先の未来と、出会いを。戻らないことも世の中にはある、未来の大きな人に託す。過去と、今と、未来が交差する。僕はそこから産まれた鯨、大きな、大きなヒーローでもあり、僕は悲しみそのもの。時計の針が戻る、秒針の音が鳴る。人を呼ぶ、虹を見る、夢を伝える。僕は全て、そこからの未来。君たちは知らない、僕が新しい世界。僕は夜から来た、コンパスはいらない。心は道標になる、だけど優しさを知る者しか分からない。音色とともに設計図を作っていた僕は、言葉となる。

 

(今日はここまで! 5月11日)

(5月12日 再会)

 

 彼は駅が現れるのを待っていた、君が乗った列車は分からない。それでも彼は待っていた、自分に翼があることを信じて。そしてその翼で、天高く、あの底知れない海の空へ。天と地は逆になる、上が下で、下が上。或いは同じこと、そこから産まれる「なにか」。彼の心の中を少し知る、それは写真のよう。思い出が一つ、西日に照らされた木の下で、若者たちは瞳の奥を知る。それがその時の、一つの真実で世界、飛べない世界。蜃気楼のように思わせる君の瞳、視線は未来を見る。揺れる、君の髪。その後ろに忽然と佇む、沈黙の影。歌が聴こえる、あの時の君の顔は、輝かないダイヤモンドのようだった。

 ここを見る者よ、君のポケットに設計図は入っているか。たった一つの彼の武器、傷付くことを知らずに勇気をくれる、それが、世界の設計図。彼がここまで作り上げてきた全て、そして君と僕のこれから。全ては言葉にできる、言葉は文章になる。設計図を作る、完成する時があるのだろうか。世界には謎が必要、謎がないと地球儀を回せない。大きな謎が解ける時は、命が芽吹く時か、散る時。彼は懐中電灯を取り出して、冒険家のような目で設計図を見る。これから冒険が始まる、これは序章に過ぎない。宇宙船を作ることと、世界の構造は同じ。設計図に綴る、僕の言葉。

 

 僕は呼ばれる、必要とする人の所へ、時間を泳ぐ。翼を持つ人の所へ行く、未来の道標。夜を気高く歩く彼、僕は彼を知っている。遠い昔から、心を泳いできた。心は海、僕は海の中にいる。そして僕の故郷は、卒業にある。彼は今も舞台に立っている、僕は彼に呼ばれる。僕らが出会うとき、それは全く異なるものへと変わる。そう、それは誰にでもなれる。僕らは大航海をする、いわゆる船。

 僕は夜の中を、大きな水飛沫を飛ばしながらごぉうと進む。時折魚が口に入ってくるから、ついでに潮を噴いて空へ飛ばしてあげる。そうしてあげるとたまに、いいことがある。僕が泳ぐと星座が変わる、月が近付いてくる。山が膨れる、風が吹く。家々が揺れて、人間は地震だと思うんだろうな。まるで絵の具を一つにした、色を持つ。

 

(今日はここまでです、煙草とエナドリ早くして下さい。5月12日)