夜の匂い、滲む額の汗、小川のせせらぎ
人混みの喧騒、若者の話し声、屋台の白煙
ここは夜祭り。
屋台のどこかに、幻のラムネが売られている、それは飴色。
月のビー玉が入っており、味は蜂蜜に近いが、ねっとりしておらず。
乾いた喉をすっと優しく、潤してくれる、まさに宝石。
どこかにある、本当に大切な宝石は、誰の手にも入らない。
誰も知らない、知ることが出来ないが、夜祭りの中にある。
どこまでも連なる人混み、浴衣姿で歩く人々、金魚を持つ子供。
その幻のラムネを飲むと、文字通り世界が変わる、あの頃へ。
人混みの中に佇む人が、在処を知っている、それは人から最も遠い人。
ゆくゆくは君になり、或いは概念になり、そして眩い金魚になる。
これを妄想だと思うだろう、世界には知らないことがある、知るべきことがある。
あってもいいだろう、その可能性が、幻のラムネを出現させる。
鍵はそこにある。