鍵のない図書館

好きな食べ物はバナナのパウンドケーキ

僕、パンク・ロックを聴いた

 スーパーで花火を買った後、汗を拭いながら駐車場へ歩く時だった。

 

「僕、パンク・ロックが好きだ」

「中途ハンパな気持ちじゃなくて」

「本当に心から好きなんだ」

 

喧騒をぶち壊して爆音が響く、車から響いているようだが姿は見えなかった。

あの一瞬が、その声が、この歌詞が今でも頭に離れない、だから文書に残すこととする。

とてもシンプルに纏まっている、言いたいことは伝わる。

 

自分の好きなことはなんだろう、それを大声で叫べるだろうか。

好きなことを好きといい、それをやれているだろうか。

あなたの好きなことはなんだろう、それを教えてくれるだろうか。

 

僕たちは常になにかに追われている、なのに時間がない。

生きて行くために必要なことを、しなければならない。

もうすぐ夏が終わる。

 

中途ハンパな気持ちじゃなくて.....。

霧に沈む喫茶店(2)

 

人参のスープとタコライス、どちらもとても美味しそう。

スープからはほのかに湯気が立ち昇り、タコライスからは焼きチーズの香りがする。

僕はこの二品を頂くことにした、窓の外ではまだ雨が降っているよう。

 

静かに雨音を耳にしながら食べ進めていると、精算台の奥から若い女性が出てきた。

黒髪を後ろで束ね、Tシャツから覗く肌は陶器のように色白く、赤いエプロンが印象的。

こつこつこつ、と僕の所に持ってきたのはレシートと、硝子で創られたたんぽぽだった。

 

とても繊細に創られている、名のある職人が手を尽くしたのだろう。

僕はスープとタコライスを平らげて思案する。

どうしたらこの硝子のたんぽぽを、生花に変化させることができるのかと。

 

腕を組み天井を見上げながら暫く考え込んだ挙げ句、僕はなんとなく足下の板を踏んでみた。

すると食べ終わった皿が片付き、出てきたのは小さな水溜まり。

雨上がり後の太陽を思い浮かべた、そこに硝子のたんぽぽを浸けてみる。

 

みるみる硝子が涙のように零れ落ちて、生き物としての輪郭を持ち始めた。

零れ落ちた硝子は水溜まりの中に氷のように溶けて行く、すくって口にしてみると塩の味がする。

すべての硝子が零れ落ちたたんぽぽは、やがてそこに根を下ろした。

 

窓から西日が射し込む、雨は止んでいるようだった。

僕はレシートを持ち席を立つ、精算台で会計を済ませていると、奥から僕が出てきた。

もう一人の僕は彼女と同じ赤いエプロンをして、ここで働いているようだ。

 

僕は役目を追えたのだ。

 

※ 後書き

展開や結末をどうしようか、そこそこ悩みました。

悩んだ結果、訳の分からないことになってしまいました。

霧に沈む喫茶店

 

大通りから脇道に抜けると、喧騒は遠のいた。

人混みを離れ、森の香りが漂ってくる小道を進む。

雨上がり、雨粒が滴る小人の道を抜けると、妖精が訪れるような珈琲店がある。

 

木々に囲まれたその店は、人間界を抜け、どこか異国へ通ずるような佇まいである。

ちりん。と控えめな音を出す戸を開けると、珈琲の心地良い香りが鼻をついた。

僕は窓辺の二人がけの席に座り、胸を撫で下ろす。

 

店内には古めかしくも、どこかお洒落なイスとテーブルがあり、どれも年期が入っている。

壁に掛けられた古時計が、頑張りながら時を刻んでいる。

橙色の明かりが眠気を誘う、雨が降ってきたのか、ざぁっという雨音が店内に響く。

 

.....ぼーん、ぼーん、ぼーんという古時計の音で目が覚めた。

いつの間にか眠ってしまっていたようである、テーブルには貴族が宝物にしていそうなティーカップに入った珈琲と、ショコラケーキが置かれていた。

 

精算台の奥、人がいそうな気配がある。

角砂糖とミルクを入れた珈琲を啜ると、頭が正しく覚醒する。

ショコラケーキを小さく切って口に頬張ると、ただただ甘い、それだけが舌の上で溶ける。

 

足下にこつん、となにかが当たる感覚がして下を覗くと、どうやらこれは足踏みミシンであったようである。

足下にある板を踏むと、左側ある輪っかが回転する仕組みになっている。

僕は試しにその板を踏んでみる、するとぽんっと目の前にあるはずの珈琲とケーキが姿を消して、人参のスープとタコライスに変わっている。

 

※ 後書き

また続きを書きます、最近更新が滞っておりすみません。

題名のない文章

 

ふとした時に考える、私たちは何故、感情を感じるのか。

楽しいと笑い、悲しいと泣き、怒られると落ち込む。

それがすべてではなくて、人によって捉え方は異なる。

 

なにかに共感し、同情し、共有する。

 

大学生の時、「人間は独り」と語っていた教授の言葉を思い出す。

誰かがいるからこそ、そしてその誰かが、あなたと違うからこそ

私たちは一人、二人、三人と仲間を増やしていく。

 

涙はどこから来るのか、心はどこにあるのか、痛む心はなにか。

なぜ誰にも分からないのか、いつか解き明かされる日が来るのか。

同じ心は一つとして存在しない、私は今日も分からないまま、社会に流される。

 

上手くできていると思う。

大雲海

 

霧の掛かった峠を抜けると、そこには見たこともない大雲海が広がっていた。

 

山頂から見下ろす眼下には、雲海が広がっている、時刻は24時を少し回った所。

なみなみとした雲が月明かりに照らされて、ゆっくりと流れて行く。

私はそれを見て、綿あめを嬉しそうに頬張る子供を思い浮かべた。

 

路肩の茂った木々から、今にも人外の類いが出てきそうな黒々とした山道を抜けると、そこには空の秘密が隠されている。

遥か地平線まで続く大雲海、それを見た時、かつて天使だった彼女は雲に飛び乗って流れて行った。

ここにはなにもない、下界のような地獄とは違い、欲望も快楽も差別も存在しない。

 

この地獄を抜け出すことができる、秘密の抜け穴、それは私の中にある。

みな私の中を通ってここへ辿り着く、ジョン・F・ケネディBEATLES伊藤博文も。

ここはあの世、などという優しい世界ではなくて、自分が辿り着きたい場所に行く。

 

ここは出発点にすぎない。

船を送り出す港のような、飛行機が飛び立つ空港のような、自宅の玄関を開ける瞬間のようなもの。

漂い続けるこの世界。

機動隊とカップラーメン

 

「機動隊」と「カップラーメン」と「人情」

 

どうだろう、この三つのワードを書いただけで、そこには「ドラマ」があると思わないか。

 

今回は読者の想像力に委ねよう。

 

※ 後書き

ネタがないだけです、絞り切った残りカスみたいな文章です、許して下さい。

 

 

夏、揺れる蜃気楼と線路の人影

 

 暑いな、実に暑くはないか。これから今日よりも、一層暑くなると考えると気が滅入る。「夏」という季節には、様々な言葉が当てはめられる。青春、恋人、花火、列車、入道雲.....四季があるとは言えども、やはり人生を象徴するようなものが紛れる季節である。

 

 「蜃気楼」を知っているか、暑い時期にアスファルトの路面上で揺れる熱気のことである。あれを見ると、いよいよ夏が近付いて来たと肌で感じる。

 

 読者が少年少女だった頃、線路上に敷かれたレールを「人生」に見立て、あらゆることを思案した時期はなかっただろうか。それを思春期とも呼ぶだろう、あの頃に持っていた疑問、哲学、感情はどこへ行った。まだ、持っているか。

 

 今となっては雲散したが、あの頃の自分はきっと今より遥かになにかを悟っていた気がする。そしてそういった疑問の答えを、今の自分が持ち合わせているとはとても、思えない。あのレールの先に立つ人影は誰だったのか、今の自分か、過去の自分か、未来の自分か、或いは他人か。

 

 季節の変わり目と同じように、風に揺られ、風に乗り消えて行く。頬を伝わる、じっとりとした汗を思い出す。人生の熱気を感じるか、蜃気楼の中から戻っては来られるか、夏には終わりがある。

こちら旅人、異常なし。

 

それはまるで、飴色の角砂糖のよう、触れるととろりと溶けてしまう。

水が張られた田んぼの中を、静かに走る電車、車窓から朝日と同じ色が零れる。

三両編成で、如何にも秘境を走っていそう、秘密の街へと辿り着く。

 

夜の香りが立ち込める、すぅーっとする優しい煙草のよう、月明かりに照らされる。

車窓から零れた朝日は、雨が降るようにぽちゃっと落ちる、そこに蛍が集まる。

電車の音が遠くなる、後に残されたのは私と、祭りの後の静けさだけ。

 

あの電車の中で揺られていたのは誰、車窓からぼうっと世界を覗いていたのは誰。

今あなたが思い浮かべたその人が、飴色の電車に揺られている。

目的地もなく、ただ時の流れに身を委ねて。

 

こちら旅人、異常無し。

伝説のPajamas

 

最近は自宅で過ごす機会が多いと思う。

君は家にいる時、パジャマか部屋着を着るだろう。スーツのようにびしっとせず、仕事着のようにしっかりせず、私服のように見栄えを気にする必要がない。

 

.....伝説のパジャマを知っているか。

なにやらそれを着ると、今まで経験したことがない高揚感に包まれ、安らぎと落ち着きをくれるアイテムらしい。

 

それを着れば、悩み、苦しみ、辛さ、これらから解放される。

極上の睡眠が約束されるのである、或いは夢から覚めないこともできる。すべてが自分の思い通りになり、なにも気にする必要はない。

 

そんな部屋着が欲しいとは思わないか、それはこの世界のどこかある。

私も場所は知らない、ただどこかにある。

見付けたら是非、私に連絡をくれ。

 

※ 後書き

最近は仕事が嫌々すぎて、文章にもキレがでません。